2025年6月10日付 日本栄養・食糧学会誌 第78巻 第3号
東北大学ナレッジキャスト時代から進めてきた吉野家、およびNeU(ニュー)との共同研究成果論文が、2025年6月10日発行の日本栄養・食糧学会誌に「和朝食の継続摂取が脳活動の活性化に及ぼす影響」のタイトルで掲載されました。電子版はJ-STAGEに6月19日に公開されました。
研究の概要と結果
今回の研究では、健康な20代〜50代の男性54名を対象に、吉野家の朝定食とパン食を比較する8週間のクロスオーバー試験を実施しました。
・認知課題中の脳血流量変化(脳活動指標)
・朝食摂取前後の心拍数変化(自律神経指標)
を評価した結果、次が確認されました。
・吉野家の朝定食摂取時に、脳の前頭前野の血流が有意に増加
・摂取後の心拍数が有意に増加し、交感神経が優位に
これらの結果は、「ご飯を主食とした定食スタイルの朝食」が、パン中心の朝食に比べて脳活動と身体活動の活性化に効果的であることを示唆するものです。
本研究の意義
ここ数年、消費者の健康志向の高まりに伴い、「健康によい」とうたう製品が急増しています。しかしながら、こうした製品のなかには、どんな理由で、どういう面で健康によいのかの「科学的なエビデンス(根拠)」が明確でないものが残念ながら多く見うけられます。
共同研究先の𠮷野家は、外食産業では珍しく、機能性食品の研究開発や、健康価値の高い商品提案に長年取り組んでおり、多くの大学・研究機関との産学連携を通じて科学的なエビデンスの取得に注力してきました。
従来𠮷野家と言えば牛丼のイメージが強いですが、「日常食で健康を増進する」というビジョンに基づき、牛丼の高付加価値化や牛丼以外のメニュー開発を進めています。
今回の研究では、ウェルビーイングとの関係性が強い朝食に着目し、吉野家の朝定食の健康増進効果をパン食と比較して、脳活動と自律神経活動の観点から科学的に評価したものです。
このような研究は、多くありそうで意外に例が少なく、日本栄養・食糧学会の論文査読者からも貴重な研究データとして評価をいただきました。
例が少ない理由の一つは、試験実施のためのハードルが高いためです。
60人近い健康な人を対象に、複合物である和定食とパン食を8週間にわたり食べ続けてもらい、前掲の試験を実施するのは容易ではなく、高い専門知識に基づく試験デザイン、プロの計測スキルとデータ分析スキルが必要なためです。
研究開発とエビデンス志向の強い𠮷野家、東北大学の「認知脳科学知見」と、日立ハイテクの「携帯型脳計測技術」を融合して誕生したNeU、東北大学加齢医学研究所&スマート・エイジング学際重点研究センターで長年活動してきた私の三者協働は、まさに時機を得た最適な組み合わせだったと言えましょう。
研究の詳細は次の論文をお読みください
・掲載誌:日本栄養・食糧学会誌(2025年6月10日発行)
・タイトル:和朝食の継続摂取が脳活動の活性化に及ぼす影響
・著者:梶原伸子、岡田拓也、村田裕之、辻 智子
・責任著者:株式会社吉野家ホールディングス グループ商品本部 梶原伸子
・論文公開URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/78/3/78_159/_article/-char/ja
𠮷野家ホールディングスおよび吉野家からのプレスリリース
論文公開に合わせて、吉野家ホールディングスおよび吉野家から次の通り、プレスリリースが発表されています。私のコメントも掲載されています。
吉野家の朝定食が脳活動と自律神経を活性化する効果を検証 (日本栄養・食糧学会誌に研究論文が掲載)
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