新しいこと苦手に 高齢者、スマホを敬遠

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日本経済新聞夕刊 2017年5月25日 読み解き現代消費

日経夕刊2面の連載コラム「読み解き現代消費」に寄稿しました。ただし、『新しいこと苦手に 高齢者、スマホを敬遠』というタイトルはデスクがつけたものです。

私がもともと提出したものは「齢を取っても新しいことに取り組むのが好きな人、億劫な人の違い」でした。私のタイトルが長いので修正されましたが、文章の趣旨と合っていません。改めてタイトルをつけるなら「『達成型の生活』で意欲低下防止を」です。

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中年期を過ぎると体力だけでなく、脳の働きも低下する。例えば、誰かにあいさつされても名前が出てこない、会話の中で俳優や歌手の名前などの固有名詞がぱっと思い出せないといった具合。「あれ」「これ」「それ」といった指示代名詞を会話の中で多用するようにもなる。

これらの「物忘れ」過去に経験した記憶を脳の貯蔵庫(側頭葉下面など)から取り出す能力の低下によるものだ。

自分の行動や新しい情報を脳に記憶として書き込むのが苦手になることによる物忘れもある。例えば何か考え事をしている最中に携帯電話にメールが入り、その返信をした後、先ほどまで何を考えていたのか忘れてしまう。これは記憶の書き込みをつかさどる背外側前頭前野の機能低下の症状である。

特に高齢期になると一般に新しいことをしたり、覚えたりするのが苦手になる。例えば、省エネのために家電製品を買い替えようとしたが、あまりの多機能に気持ちが萎えて買い替え自体がおっくうになる、といった具合だ。

記憶の書き込み機能の低下に意欲の低下が加わり、より深刻な状態になったためだ。若いころにパソコンを使っていない高齢者にスマホが一定割合以上普及しないのも、これが大きな理由だ。

書き込み機能向上には作動記憶容量を増やす脳トレが有効だが、意欲低下の防止には「達成型の生活」がお勧めだ。

例えば、3カ月後にベルリンフィルの演奏会に行く、半年後に生涯初の世界一周旅行に行く、など具体的な目標を設定する。すると目標達成が楽しみになり毎日がワクワクする。

こうした生活が脳内に「ドーパミン」という物質を放出しやすくなる。ドーパミンは最近の研究では「やる気」や「元気」を生み出す役割があると考えられている。特に退職後は小さくてよいので具体的な達成目標を持つことをお勧めしたい。

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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授、シンクタンク・ソフィアバンク アソシエイツ、エイジング・アジア国際アドバイザー、シンガポール工科デザイン大学 国際アドバイザー。

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

2004年に世界最大の高齢者NPO AARPがロンドンで開催した国際会議に、唯一の日本人パネリストとして招聘されて以来、スイスでの世界エイジング・世代問題会議にチェアマンとして招聘、シンガポール政府主催SICEX2008の基調講演者に招聘されるなど多くの国際的な活動に取り組んでいる。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「GLOBAL AGEING INFLUENCERS」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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