高齢者の運転免許返納 看護師、体を気遣い説得

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4月20日 日本経済新聞夕刊

4月20日の日本経済新聞夕刊くらし面「高齢者の運転免許返納 看護師、体を気遣い説得」という記事が掲載されました。内容は、認知機能の低下した高齢者からいかに免許を返納してもらうか、看護師による説得も含めてあの手この手で行っているというものです。

記事の最後に私のコメントが次の表現で引用されました。

シニア事情に詳しい東北大の特任教授、村田裕之さんは「認知症の高齢者は返納させるべきだが、グレーゾーンの人には運転可能な年齢を延ばす視点も必要」と言う。交通機関が乏しい地方では車は欠かせない生活の足だ。「講習で脳トレーニングや筋トレを義務付けて運転可能な年齢を延ばせば、健康的な生活を少しでも長く送れるはずだ」 25年には団塊世代がすべて75歳以上になる。75歳以上になると運動能力が下がり、交通事故の危険性は高まる。事故の増加を引き起こさないよう、今まで以上の効果的な対策を講じることが求められる

この引用コメントの内容を補足します。

私たちの脳の認知機能は普通の生活をしているだけだと加齢と共に2つの面で衰えていきます。一つは頭の回転速度が落ちていきます。これはパソコンで言えばCPUという計算処理装置の劣化です。これに伴い、とっさに行動できなくてあわてる、言葉が出てこない、判断が遅くなる、といった状態になります。

もう一つは記憶できる量が減ります。これはパソコンで言えばメモリーという記憶装置の劣化です。これに伴い、新しいことの学習が難しくなったりおっくうになったりする、次に起こることの予測が難しくなる、車の運転が下手になる、といった具合です。時々暴走老人という言葉を耳にしますが、怒りっぽくなるというのも記憶できる量が減ることによるものです。

自動車の車体としての安全性能は昔に比べて飛躍的に向上しました。しかし、いくら車体の安全性能が向上しても、運転者の運転能力が低下しては、安全運転はままなりません

現状は75歳以上の人を対象に運転免許更新時に認知機能試験で運転能力をチェックし、能力が不足すると思われる場合、運転免許の返納を勧めています。しかし、このやり方だと、記事にあったように特に地方に住んでいて車なしでは生活ができない人にとっては死活問題です。

前橋市のように免許を返納した高齢者にタクシー代を半額補助するのは短期的にはありですが、今後高齢者の数が増えた場合、財政的に持続可能かが疑問です。また、補助を受ける方も上限1000円だと、遠くに出かけることができず、利便性は低いでしょう。

運転免許の自主返納は第一ステップとしては良いですが、今後の高齢者の増加を考えれば、次は高齢者の「運転能力の維持・向上」こそが不可欠です。

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親が70歳を過ぎたら読む本

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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