朝日新聞 2015年4月27日 Reライフ 人生充実 なるほどマネー
定年後の起業には「従来型起業」と「身の丈起業」がある
定年後の起業には「従来型起業」と「身の丈起業」があります。従来型起業は、しっかりした事業計画書をもとに、銀行などから起業資金を借りて、何人ものスタッフを雇って起業するものです。
これに対して「身の丈起業」は、起業資金は自己資金で賄い、スタッフは自分1人プラス1人程度にとどめます。本連載では「身の丈起業」についてお話しします。
サラリーマンしか体験したことがない人にとって起業はリスクが高いというイメージがあります。しかし、定年退職後の起業は、若い人の起業に比べて、▽失敗しても年金が出るので生活には困らない▽退職金と貯蓄があるので、ある程度まで自己資金で賄える▽現役時代の職業人としてのスキルや人脈・信用の蓄積がある、といったメリットがあります。実はリスクが低いと言えます。
とはいえ、会社という組織に乗っかれば自動的に収入を得られたサラリーマン時代と違い、起業では基本的に自分で何でもやらないといけません。下手をすると持ち出しばかりで、気が付くと自己資金が枯渇したという例も少なくありません。「身の丈起業」はそうした起業のリスクを少なくする形態です。
事業を早期に軌道に乗せていくために守るべき基本はいくつかあります。順に見ていきましょう。
【顧客がいなければ起業しない】
「身の丈起業」では、売り上げが先、支払いが後、が鉄則です。起業したての頃はとかく支出が多くなりがちです。ところが、肝心の売り上げはなかなか得られないのが普通です。
顧客がいないのに起業する人を時々見かけますが、これは無謀です。中高年の起業では現役時代の取引先に顧客になってもらうのが、低リスク起業のコツです。言い換えれば「顧客がいるなら起業してもよい」ということです。
【無借金で起業する】
そもそもサラリーマンしか体験してない人が起業した会社に金融機関が投資する可能性は極めて低いです。無職になった人はローンも借りにくくなります。
何よりも奥さんにも「借金だけはしないで」と言われる確率が高いです。せっかく、退職金をもらうわけですから、その一部を起業資金にするのが一番容易です。
【人件費などの固定費を最小化する】
起業時の支出の大半は、人件費と事務所の家賃です。起業初期にはこれらをいかに抑えるかが重要です。
お勧めは都市部にあるレンタルオフィスを使うことです。月額5万円程度で電話受付、会議室が利用でき、所在地を事務所として登記できます。
【起業するまでにIT(情報技術)スキルを身に着ける】
パソコン、インターネット、スマートフォンなどは、会社運営に不可欠です。ITを使いこなせば、「身の丈起業」でもかなりのことが可能です。
このほか「他社とはっきりとした違いのある起業テーマを選ぶ」というのも大事です。次回以降、いくつか事例を挙げてお話しします。
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