読書:リタイア・モラトリアム

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2007年10月14日号 日本経済新聞

再雇用制度などで定年を過ぎても職場にとどまるシニアが増えた。定年から実際に職場を去るまでの数年間を、内外のシニア事情に詳しい著者は「リタイア・モラトリアム」と名付け、この時期の過ごし方で残りの人生の充実度が決まると提言する。

モラトリアムとは本来、執行猶予の意味。心理学では青年から大人への助走期間を指す。家族や地元という束縛から解放され、生き方を探し始めるのが第一のモラトリアム。著者が描く60代は、どこかこの青年期と似ている。

嘱託やパートタイマーとなり、時間のゆとりが増えると「今までと違うこと」がしたくなる。スポーツ、ネット株取引、旅行、映画などだ。世間体や立場から控えてきた文章、写真、音楽による自己表現にも目が向く。

次に始まるのが残りの人生の目的を模索する自分探し。文化体験や人脈づくりも盛んになる。こうした試行錯誤の結果、会社から与えられた使命に代わる個人的使命を見つけ、社会と無理なくかかわり続ける「半働半遊」生活を手にするのが第二のモラトリアムからの幸せな卒業になると予測する。

米国では一時、社会から離れ、日々遊び暮らすシニア村開発が流行したが、すでに人気は下火だという。日本にも同じ変化が起こると著者はみる。今年60歳に達し始めた団塊世代の今後を予測するうえでも有益な本。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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