財布のひもの固いシニアが買いたくなるサービスとは

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高齢者住宅新聞 介護保険に頼らないシニアビジネス成功の12のヒント 第6回

将来不安があるからこそ、時には「わくわく感」に浸りたい

シニア層は若年層より資産が多くあるのに、なぜ、それが消費に回りにくいのか?老後に対する漠然とした不安があるからだ。一方、不安があるからこそ、時にはそうした不安を忘れたい、前向きな気持ちになりたいとも思うものだ

人が前向きな気持ちになるけん引力の一つは「わくわく感」である。これが促す消費を私は「わくわく消費」と呼んでいる。

雑誌「いきいき」で販売した「ボストン・ワンマンス・ステイ」がその一例だ。憧れの街、ボストンで1カ月間、単なる観光ではなく、暮らすように生活して、英語を学んで、友達も作ろうという複合商品である。

1カ月間で飛行機代、ホテル代、食事代、英語学校代など全部込みで一人120万円(2007年5月現在)と決して安くない。しかし、告知2週間で定員30人分を完売した。参加者のほとんどは50~60歳代の女性だった。

この商品企画に至った理由は、当時毎月7千枚届いた読者ハガキに寄せられた顧客の声だ。「何かをはじめたい」、「リセットしたい」、「今だから学びたい」という変身願望をもつ読者が大勢いることに気が付いた。そこで、「皆さん、あこがれの地・ボストンで、もう一度人生リセットしませんか?」と呼びかけ、背中を押したのである。

なぜ、普通の主婦が120万円もする商品を買うのか

ここで重要なのは、購入した人たちが富裕層ではなく、ごく普通の主婦だったことだ。彼女らはへそくりから120万円を支払ったのだ。もちろん彼女らにも将来不安はある。

一方、人生の残り時間も少なくなっている。この機会を逃したらもう二度と行けないかもしれない。それなら、今行くしかない。その気持ちを後押しする商品だったからだ。

60歳になっても、70歳になっても、わくわくしたい人はそれなりにいる。そして、心の底からわくわくできるものならば、なけなしのへそくりをはたいてでも、買いたいという顧客は必ずいるものだ。

成功するシニアビジネスの教科書
高齢者住宅新聞

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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