損のない読書:シニアビジネス

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2004年6月19日  日経MJ(流通新聞)

「私の夫、貸します」というビジネスが、ロシアでヒットしているという。借り手は専ら独身女性--。といっても、いかがわしい話ではない。増加する「高齢」で「独り暮らし」の女性向けに、家具の修繕などちょとした力仕事を引き受けるニューサービスが台頭しているというわけだ。

米国で同種の需要を狙い、プロのサービスを提供、急成長しているのが「ミスターハンディマン」という企業。こじゃれたデザインのバンに工具や部品を積み込み、標準化したメニューに基づき透明な料金設定で配管修理や草むしり、屋根の手入れをする傍ら、お年寄りのおしゃべり相手も務める。

DIY文化の中心である米国ですら、高齢化で「DIY代行」サービスが幅をきかせ始めたのだ。社会的価値観の大変動。そこにビジネスチャンスが生まれる。

本書はこうした米国の高齢者向けビジネスの数々を極めて具体的にリポートする。

音声で時間を知らせてくれる腕時計やスタイリッシュなデザインのつえなど、シニアの心理をとらえる商品に特化して急成長中の通販会社。専用車で家庭を訪問する出張グルーミング(ペットの手入れ) サービス。自宅で小規模なビジネスをしたい高齢者を組織し、営業支援や人材派遣を仲介する会社。知的好奇心に富む高齢者に永住用の集合住宅やサマーキャンプを提供する大学--。

1960年代から緩やかに高齢化が進んできた米国は、成功例も失敗例も含めニュービジネスの見本市だと実感する。

著者の村田氏は欧州の石油会社、国内のシンクタンクなどを経て独立。日本で高齢者向け新規事業支援をするかたわら、米国のシニアビジネスに関するシンクタンクにも正式メンバーとして参加している国際派。

直接経営者にインタビューし、サービスの現場にも足を運んで利用者の声に耳を傾ける。机上でデータをいじくり事例をかき集めた類書とは全く違うリアルな情報が詰まった一冊。

「日本でもシニアビジネスの勉強会は多いが、紹介される(国内での)成功事例は同じ会社ばかり」と指摘する。マスメディアの記事はどうだろう?耳が痛い。ダイヤモンド社、千六百円(税別)

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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