「企業社会」から「地域社会」へ 適応の秘訣

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2007年 第69回全国都市問題会議 文献集

分権時代の都市とひと ―地域力・市民力―

ボストンから南西約200キロに位置するコネティカット州ハートフォードにLeadership Greater Hartford(LGH)という団体がある。この団体が運営する退職者向けプログラムの一つが「サード・エイジ・イニシアティブ(Third Age Initiative)」である。これは、退職者に対して地域コミュニティのリーダーとして活躍してもらうことを目的に「リーダーシップ教育」をおこなうものだ。このプログラムは全米初の試みとして国連ボランティア会議に招聘されたこともある。

(中略)

日本でリーダーシップについて体験を通じて系統的に学ぶことのできる機会は果たしてどのくらいあるのだろうか。大学ではほとんど皆無であり、一部の企業で研修プログラムとしてある程度で、あとは各自が自分の体験で学んでいく以外に方法がないのが現状だ。そして、退職後にはそのような機会すら、ほとんどなくなるだろう。

(中略)

このような退職サラリーマンに必要なのは「会社組織の階層構造」の中ではなく、「フラットな関係性」において円満な協力関係を構築できる力量だ。サード・エイジ・イニシアティブの活動の先進性は、そのような力量を身に着ける機会を退職者に提供していることにある。地域社会などの階層構造のない世界で求められるリーダーシップとは何かを考えるヒントを教えてくれるのだ。

(中略)

実は、これまでも一部の企業では、退職前研修と称してセミナーや合宿による退職準備教育をおこなってきた。しかし、その中身は、老後のファイナンシャル・プランニングやリフレッシュのためのフィットネスなどの内容が多かった。ところが、一般に、サラリーマン(特に男性)は、退職後に次の「5つのない」に直面し、困惑する場合が多い。

  ①自分を示す肩書きが「ない」
  ②毎日行くところが「ない」
  ③仕事以外の特技が「ない」
  ④会社以外の人脈が「ない」
  ⑤何をすればよいかわから「ない」

したがって、これらの「5つのない」を解消するためのスキル・手段を指南し、退職後の生活を豊かにするための機会を提供するサービスは、「自分探しの予備校」とも呼ぶべきビジネスチャンスにもなる。この名称には「企業社会」から「地域社会」への生活ステージの変化を断続的にせず、スムースにおこなう意味をこめている。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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