高齢者住宅、発想の転換を ロボット活用、安く良質に

高齢者住宅の例 新聞・雑誌
高齢者住宅の例

日本経済新聞夕刊 201534日 読み解き現代消費

「変なホテル」の発想による「世界一生産性の高い高齢者住宅」が必要

今夏、ハウステンボス(長崎県佐世保市)内に、接客や客室清掃などの業務をロボットがこなす「変なホテル」が開業する。人員はビジネスホテルの3分の1程度だが、設備のグレードは高く、価格は安く抑えるという。目標は「世界一生産性の高いホテル」だ。

これからの高齢者が求める「終の棲家(ついのすみか)」は、これと同じような発想の住宅なのではないか。右肩上がりで増えている「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」に、その兆しがうかがえるのだ。

「サ高住」の登録戸数は2015年1月時点で約17万戸。着実に増えている背景には、政府が建設費用に補助金を出し、税制優遇策も整備していることがあるが、利用者がメリットを実感していることが大きい。

例えば、通常の有料老人ホームなどと異なり、高額な入居一時金がいらない。一方で付帯する介護サービスの質は確実に向上しており、有料老人ホームと比べて遜色がなくなってきた。

食費・光熱費込みで月額15万~19万円程度という「サ高住」の利用料は、高齢者の可処分所得に基づいている。その大半は年金であり、今後、年金支給額が減る事態になると、現状の利用料では入居は難しくなる。

設備やサービスの質を落としたりすれば、利用料は引き下げられるだろうが、現代の「わがまま」な高齢者がそんな住宅に満足するとはとても思えない。

そこで必要なのが「変なホテル」と同じ発想である。技術の進歩が著しいロボットに任せられる部分は任せて生産性を高めることで、高品質の設備やサービスを安価に提供するのだ。

少子高齢化の人口動態が継続し、高齢者の増加が今後も続くと予想される一方、個人の老後資金の不足感は根強い。「老後難民」を爆発的に出現させないために、官民双方にこうした発想の転換が必要なのではないか。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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