ノジュール12月号連載 50歳から輝く暮らしのヒント 今日から始めるスマート・エイジングのススメ第3回
JTBパブリッシングの月刊誌「ノジュール」12月号連載「50歳から輝く暮らしのヒント 今日から始めるスマート・エイジングのススメ」、第3回のテーマは「ぐっすり眠りたい」と思っていませんか?
本連載では、拙著「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣」をもとに、主に50代・60代の方向けにわかりやすい解説を心がけます。
睡眠の質に重要な「メラトニン」とは?
中年期以降になると睡眠障害に悩まされる人が増えてきます。現状、日本人の40歳から59歳で約5人に1人が、60歳以上だと約3人に1人がなんらかの睡眠障害を抱えているといわれています。
睡眠の質とそれに関連する体内時計の調節に重要な役割を担っているのが「メラトニン」というホルモンです。
メラトニンは目に入る光の量が減ると分泌が始まり、光の量が増えると分泌を止めます。つまり、夕方暗くなってから出始め、暗い間は出続け、明るくなると出なくなります。
メラトニンが血中に放出されると脈拍、体温、血圧が下がり、睡眠の準備ができたと体が認識し、睡眠に向かわせる効果があります。
中年期から不眠症の人が増える理由
睡眠障害で最も多く見られるのが不眠症で、①寝つきが悪い(入眠障害)、②眠ってから頻繁に目覚めてよく眠れない(中途覚醒)、③早く目覚めすぎて困る(早朝覚醒)、④休息感が欠如している(熟眠障害)の4種類があります。
中年期以降に不眠症が増えるのは次の3つの理由が考えられます。
一つ目は、加齢に伴い前掲のメラトニンの分泌量が減ることです。一般に思春期以降減少しはじめ、70歳を超えるとピーク時の10分の1以下にもなります。加齢により分泌の信号伝達系に「退行性変化(組織の形が変化して、その働きが低下すること)」が生じるのが原因と考えられています。
二つ目は、仕事や身の回りのことからくる精神的ストレスにより調節系の神経伝達物質「セロトニン」の分泌量が低下し、これに伴いメラトニンの分泌量が減るためです。
メラトニンはセロトニンを原料に生合成されるので、セロトニンの分泌量が減るとメラトニンの分泌量も減少します。
最後は、夜間、光に当たっている時間(光暴露時間)が長くなることで、メラトニンの分泌量が減ることです。多くの課題と責任を背負っている中年期には、ついつい夜中にもパソコンやスマホを見てしまいがちです。
実はこれらの液晶画面や蛍光灯から発生する強力なブルーライトが、メラトニン分泌を抑制します。ブルーライトを夜中に過剰に浴びるとメラトニンの分泌が減るだけでなく、脳や体を覚醒状態にする交感神経が優位になり、さらに不眠症を起こしやすくなります。
眠りの質を上げるために入眠2時間前にできること
前述の不眠症の要因とメラトニン分泌の仕組みを考慮すると、眠りの質を上げるには次が有効と考えられます。
1.入眠前2時間は「リラックスモード」に入る
これは寝つきをよくするための対策で、例を挙げると①38度ほどのぬるめのお湯で体をじっくり温める、②パソコン、スマホなどを見ない、③白湯や生姜湯などカフェインのない温かい飲み物を飲む、などがお勧めです。
2.入眠前2時間からアルコール類を飲まない
酒は中途覚醒の大敵です。アルコール類を摂ると中枢神経の活動が抑制され、一時的に眠気を生じますが、抑制性の神経伝達物質であるGABAの作用も抑制するため、中途覚醒が起きやすくなります。
また、アルコールには利尿作用があるため、夜中に何度もトイレに行きたくなり、中途覚醒しやすくなります。
3.入眠前2時間は激しい運動をしない
激しい運動は交感神経を活発にさせます。入眠前に心拍数を上げて息があがるほどの運動をすると、交感神経が優位になり、体が覚醒状態となり睡眠を妨げます。
運動を行うなら、ストレッチや呼吸運動主体のヨガなどの軽いものがお勧めです。
4.入眠前2時間は食事をしない
夜遅い時間の食事を抜くことは、肥満防止するだけではなく、もう一つ重要な意味があります。入眠前2時間以内に食事をすると、身体は消化吸収に集中することになり、睡眠時に脳や身体を休めることができなくなります。
夜遅い食事になってしまう場合には、牛乳やヨーグルトなどのたんぱく質を多く含み、消化のいい乳製品を少量摂るのがいいでしょう。
是非今日から“入眠2時間前”の生活を変えてみましょう。