好きなことを見つけて「自分軸」で生きていこう

新聞・雑誌
日本航空健康保険組合の機関誌「めいぷるくらぶ」

日本航空健康保険組合 めいぷるくらぶ 2020春号 人生100年時代を生き抜くヒント

加齢適応力を身に着ける生活習慣は新型コロナウイルス時代こそ必要なもの

日本航空健康保険組合が発行する雑誌にインタビュー記事が掲載されました。

このインタビューを受けたのは、実は昨年12月初旬。新型コロナウイルスのおかげで、人生100年どころか、明日の健康がどうなるかが見えない雰囲気に様変わりしました。

今の日本の最大の懸案はいかにして医療崩壊を起こさないようにするか、感染クラスターの発生を防ぎ、重症者数を最小化して時間を稼ぎ、人工呼吸器や対応可能な病室の整備をしながら、ワクチンと治療薬の開発を行うことです。

一方で重要なことは、私たち一人ひとりが予防的な生活スタイルを身体化し、免疫力を向上することです。拙著「スマート・エイジング」で書いた「加齢適応力」を身に着ける生活習慣とは、新型コロナウイルス蔓延の時代こそ、必要なものだと改めて認識しています。

以下にインタビュー記事全文を掲載します。

「人生100年時代」が謳われている今、100歳まで心身共に健康で幸せにいきていくためには、具体的にどうしたらよいのでしょうか? 今回は、精神面や生きがいにスポットをあて、高齢社会研究の第一人者である村田裕之先生にお話をうかがいました。

加齢に伴い変化する、身体と心への対応

人生100年時代を乗り切るためには、加齢に対する「身体と心の“適応力”」が必要です。私たちの身体や心は、年齢と共に様々な変化を来たします。その大きな節目の一つが50代。

そして次は75歳前後です。75歳を過ぎると医療機関の受療率や認知症の発症率が急激に高くなります。ですから、まずは、こうした加齢による大きな変化が起きるということを理解してください。

加齢に対する「適応力」をつけるためには、まず「有酸素運動」「筋トレ」「脳トレ」「栄養バランスの良い食事」が必要で、これらを生活習慣として取り入れるのが基本中の基本です。

さらに「人と交流する習慣を持つこと」が精神面においてとても重要な要素です。

リタイア後に何の趣味もなく、家でゴロゴロしていると、体力が衰えるだけでなく、認知症の発症リスクも高まります。人と交流してコミュニケーション機会を増やし、いつまでも社会の一員として活動し続けることが、心身の機能も高めることにつながるのです。

「自分軸」を見つけて、自分らしく生きる

人生100年時代を考える上で最も重要なことは、「亡くなる時、どういう死に方をしたいですか?」。これを裏返せば、「あなた自身はどういう生き方をしたいのか?」ということです。まずはこれを突き詰めて考えてみてください。

これからの時代は「自分らしく生きる」ことが非常に大切になってきます。自分らしく生きるためには「自分軸」を持つこと。自分軸で生きるとは「自分の基準」を中心にして生きるということです。

リタイアした方の活動の例としては、地域の活動、市民サークル、NPO活動、ボランティア活動などいろいろあります。もちろん自分の趣味をとことん追求したいという方は、それで全く構いません。自分軸を持ち、自律した生活ができると自身の存在意義を感じられ、人生が充実してきます。

もし、自分軸が何なのかわからないという方は、資格を取る、旅行に行く、勉強会に行くなどして、いろいろ試行錯誤してみると良いでしょう。

最近は、自治体が主催する高齢者向けの「いきいき大学」の利用者が増えています。勉強・学びは「自分に何ができ・何ができないか」を考える良い機会になります。

また、参加すると友人ができて「自分の向き・不向き」を彼らが客観的にアドバイスしてくれることもあります。私が知る限り、自分軸を早く見つけた人はハッピーですね。

「ありがとう」の言葉で元気になる

人は何らかの形で誰かの役に立ち、「ありがとう」と感謝されると、嬉しく感じて元気が出てきます。一方、自分が他人に感謝する時にも幸せを感じます。

これらの感情が起こるのは、脳内で前者の場合は「ドーパミン」、後者の場合は「エンドルフィン」といった神経伝達物質が分泌されることによるものです。つまり、感謝が認知心理的に良い作用をもたらし、笑顔も増えて心の健康増進につながるのです。

笑顔は年をとるとだんだん減りがちです。理由は人と会話する機会が減るからです。誰かと会話している時、相手の表情を見ながら脳の多くの部位が働いていますが、それがないと脳を使う機会が減り、認知機能が低下してしまいます。

ですから、できるだけ外に出て、多くの人と交流し、コミュニケーション機会を持ちましょう。それが認知症予防につながります。

さらに、人と関わる時は自分に近い目的を持つ人を見つけ、小さくていいので何か共通の目標を持って一緒に創り上げていくと良いでしょう。明確な目標を持つと、ドーパミンが分泌しやすくなりさらにイキイキとしてきます。

高齢者は潜在的可能性に満ちた存在

かつて高齢者は社会的弱者と見なされていました。でも、今は違います。能力を発揮できる場があれば、それなりに力を発揮する可能性がある、そう見なされるようになりました。

ですから60代・70代になっても、あきらめる必要はありません。ご自身の潜在力発揮のためには、新しいことに触れる機会、チャレンジする機会をたくさん作りましょう。

人づき合いの面では、若い人と接する機会をなるべく多く持つことをお勧めします。そして、退職したら好きなことをやりましょう

時間の50%は自分の好きなことを、残りの半分は世の中のために役に立つことをしましょう。遊ぶ時はとことん遊んでお金を使う、それが経済を活性化させ、世の中のためになり、現役世代を支えることにもつながります。

まだ、好きなことがない人は、早くそれを見つけましょう。好きなことに徹底的に取り組んでいる人は、他人からも幸せそうに見えますよね。

今、医学の最先端の分野では、幸福度と長寿の関連を調べる研究が進んでいます。まだエビデンスは少ないものの、「自分が幸福だと思っている人が、結果的に長生きをする」という報告が出始めています。

皆さんには今が何歳であっても、好きなことに夢中になって、自分らしい幸せな人生を100歳まで送って欲しいと思います。

スマート・エイジング講演
加齢(エイジング)とは人間の発達プロセスです。私たちは、加齢とともに何かを得て、成長し続けられる。その結果、社会はより賢明かつ持続的な構造に進化できる。それがス...
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