顧客をスタッフに起用 シニア「攻略」新モデル

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日本経済新聞夕刊 2017年1月25日 読み解き現代消費

日経夕刊2面の連載コラム「読み解き現代消費」に『顧客をスタッフに起用 シニア「攻略」新モデル』を寄稿しました。

「読み解き現代消費」は、毎週水曜日、気になる消費トレンドについて、その背景などを読み解くコラムです。私も執筆者の一人に名を連ねており、一か月半に一度のペースで寄稿しています。以下に全文を掲載します。

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旅行会社のクラブツーリズムには首都圏を中心に300万世帯、約700万人の会員がいる。主な会員は60、70代のシニアで、多くのテーマ型旅行を実施している。

この会社の面白いところは、顧客参加型の活動だ。旅行情報満載の月刊誌「旅の友」を会員に無料で配るのだが、配送手段は宅配会社だけではない。エコースタッフというスタッフがいて、彼らに直接配ってもらう仕組みがある。

このエコースタッフは、もともと同社の会員、つまり顧客である。スタッフになって月刊誌を月に一度他の会員に配ると部数によって数千円から数万円程度もらえる。これでも配送サービスで送るよりもコストが安いので、会社側にはメリットが多い。エコースタッフの数は全国で現在約7000人にのぼる。会社を定年退職した人も結構いて、最近は希望者が多いという。

エコースタッフは、「旅の友」の記事という共通話題で他の会員と会話の機会が増えて楽しい。たまったお小遣いでエコースタッフ同士が一緒に旅行に出かけることも多い。その際わざわざ他社商品に乗り換えることはなく、クラブツーリズムの商品で出かける。

興味深いのは、スタッフの皆さんはこうして旅行に行くので、結果としてスタッフとしてもらっている金額以上の出費をする場合も多い点。年金収入以外の副収入は、そのほとんどが可処分所得になる場合が多いので気兼ねなく使えるという面もある。しかし、重要なのは、仲間と旅行に行き楽しむ機会が増え、それが出費の機会も増やすことだ。

このようにもともとは単にサービス提供を受ける立場の顧客が、事業の一部に関与してサービス提供の「当事者」になると、活動機会が増える。私が「当事者消費」と呼んでいるこのような消費形態は、今後のシニア消費を促す重要なモデルの一つになるだろう。

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