供給側視点から入居者主体の価値創造へ

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2009年9月2日 月刊シニアビジネスマーケット9月号 特集トップインタビュー

こうした要素を踏まえていくと、有料老人ホームなど高齢者住宅は、究極「エクステンデッド・ホーム」(extended home)を目指すべき、というのが私の持論です。実の家族ではないが、それに近い役割を担ってくれる人々を「エクステンデッド・ファミリー」(拡大家族)と呼びますが、それと同様の意味での私の造語です。

――具体的にはどのようなイメージですか。

村田●本来、高齢者は住み替えなどせずに自宅にいたいというのが本音です。しかし現状は在宅か施設か、つまり0か1かを求められ、その中間がない。そのため意思決定がしづらいのです。実際、高齢者住宅に移り住んでも本当にそこで安心できるまで自宅は手放さず、処分は後回しにするというケースも多々見られます。

そのため、今後は0と1の間の中間項が求められます。たとえば3カ月から半年程度の仮住まいができるような仕組みを整えることです。本契約の前に月額家賃制などで長期間の体験入居ができる仕組みがあれば、住み替えを前向きに考える人はずっと増えるはずです。  

また基本的に自宅に住んでいて、少し体調が悪くなった、しかし入院するほどでもない、介護施設に入るほどでもない、という状態になった際に緊急避難的に入居できるシステムも求められるのではないでしょうか。 つまり、これらの仕組みによって、いわば「自宅の延長線上」のような施設づくりを行なうこと、これがエクステンデッド・ホームの発想です。

(本文より抜粋)

現状の高齢者住宅の問題点から今後求められる価値のあり方をお話してきましたが、何も高齢者住宅に対する需要がなくなる、というわけではありません。その質の見直しが問われるとともに、新たなサービスのあり方が求められているということなのです。その際の基本となるのは、施設側の押し付けや短期的・表層的な価値ではなく、入居者の生活を中心にした価値のあり方に発想の転換をしていくこと、これに尽きると思います。

 綜合ユニコム刊『月刊シニアビジネスマーケット』9月号より

『月刊シニアビジネスマーケット』はシニアビジネスに役立つ情報が豊富なビジュアルとともに満載です。一読をお勧めします。(村田)

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