シニアビジネスで世界のリーダーになれる日本

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2009年8月24日 日経懇話会会報Vol.123 連載 シニアビジネス豊国論 第1回

「社会の高齢化」は世界中で確実に進んでいる

米国発の金融危機以降、一寸先に何が起こるか予想しづらくなっている。こういう先行き不透明な時期こそ、確実に起きている構造的変化に目を向けることで経営の不確定要素を排除できる。その構造的変化の一つが、世界中で確実に進んでいる「社会の高齢化」だ。

国連の定義によれば、高齢化率(65歳以上の人口を全人口で割った率)が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」という。皆さんは2030年までにアフリカや中近東を除く世界の多くの国が「高齢化社会」に突入することをご存じだろうか。      

日本は世界一の「超高齢社会」

日本の高齢化率は09年現在推計で22.5%に達し、世界一の「超高齢社会」となっている。この主な理由は、「少子化」と「長寿命化」の同時進展である。「少子化」については、すでに多くが語られている

一方で、日本人が過去どれだけ「長寿命化」しているかはあまり知られていない。日本人の平均寿命は戦後伸び続けており(図表1)、厚労省平成一九年簡易生命表によると、男の平均寿命は79.19年、女の平均寿命は85.99年で世界一である。このペースで行けば、2030年には男女合わせた平均寿命90歳突破の可能性が十分ある。

世界から注目されている日本の動向

 世界一の「超高齢社会」日本の動向は世界各国から注目されている。50歳以上の会員4千万人を有する世界最大の高齢者NPOである米国AARP(旧称 全米退職者協会)が最も注目している国は日本である。

AARPは、グローバル・エイジング・プログラムという世界各国の高齢化研究を進めており、04年には、ロンドンで初の国際コンファレンスを開催し、私も招かれた。また、06年には日経新聞との共催で東京でも開催した。

また、欧州で毎年9月に開催されているWorld Aging & Demographic Congressには、欧州の研究者を中心に多数の有識者が参加するが、日本の動向はいつも注目の的となる。

さらに、韓国をはじめアジア各国も日本の高齢化対応に注目している。シンガポールでは昨年60歳以上に特化した商品デザインセンターが政府の後押しで設立され、シニア産業の育成に注力している。

このように世界から注目される理由は、良くも悪しくも日本が高齢社会の「ショーケース」となっているからだ。すでに超高齢社会である日本は、高齢化に伴う課題が顕在化するのが他国よりも早い。また、年金などの社会保障の課題だけでなく、個人の健康や生活設計に対するニーズには「世界共通」のものが多い。

だから日本をじっと見ていれば、自国の近未来の姿が見えてきて、自国で課題が顕在化する前に対策を講じることができるのだ。たとえば、韓国では08年より介護保険制度が始まったが、これを始める数年前から日本の事例を実に詳細に研究していた。

日本はシニアビジネスで世界のリーダーになれる

私は、日本はシニアビジネスで世界のリーダーになれると真面目に考えている。その理由は、日本で揉まれたシニアビジネスが世界で通用することを知っているからである。次号以降、事例とともにお話しするが、ポイントは二つある。

第一に、日本は、高齢化の課題が世界のどこよりも早く顕在化する「課題先進国」であること。これは裏返せば、ビジネスチャンスが世界のどこよりも早く顕在化することを意味する。だから、常に世界に先駆けて商品化でき、いち早く市場に投入できる優位性がある。

もう一つは、シニア市場とは多様な価値観をもった人たちが形成する「多様なミクロ市場の集合体」であること。この「多様性市場」には、きめ細かな対応力が求められるが、日本の集積化技術と日本人の細やかな情緒感覚がこの対応力を強める。

このように、日本はシニアビジネス分野で他国に対して優位に立てる素地を十分に持っている。目先の景気変動だけにとらわれず、視野を広め、先回りの戦略を取ることで、道は開けるのだ。

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