体験経済による顧客価値の上げ方

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高齢者住宅新聞 介護保険に頼らないシニアビジネス成功さらなる12のヒント 第9回

エクスペリエンス・エコノミー(体験経済)とは、顧客にとっての「体験」が経済価値になるという考えだ。体験経済においては、コモディティー、製品、サービス、体験の順で価値は上がっていく。

例えばコーヒーの値段は、コーヒーに関する体験の中身によって変わる。どこにでもあるコーヒー豆をバラ売りすると、コモディティーとなり1杯分の価格は1円にしかならない。それをパッケージにして売ると1杯分当たり20円に上がる。

(写真はスターバックス日本第1号店)

さらに、店舗でカップ入りの珈琲で提供すると1杯400円になる。さらに、高級ホテルのラウンジでサービスすれば1000円になる、という具合だ。

これに目をつけて大成功したのがスターバックスである。事業の初期段階は豆の販売から始め、次に立ち飲み店に進出。その後、自宅(第一の場所)でも職場(第二の場所)でもない「第三の場所」を提供するというコンセプトを取り入れ現在のスタイルを確立した。

コーヒー以外の価値も提供している。たとえば、店内の無線LANはスターバックスが先駆的に始めたサービスだ。これらの結果、ドーナツやサンドイッチなどかなり割高にもかかわらず、ここだと利用者はつい買ってしまう。

このように、その場の体験価値を上げれば、価格が多少割高でも、顧客は受け入れるシニア顧客相手でも、客単価を上げるにはどういう体験価値が満足度を上げるのかを考えることが重要だ。

東京・渋谷のヒカリエにある東急シアターオーブはその良い例だ。他の類似劇場と異なり、ブロードウェイのミュージカルが日本人の劇団ではないオリジナルの劇団で観られ、本物感がある。渋谷駅から劇場までエレベーターで直結しているため、足腰の弱ったシニアでも来場しやすい。

ヒカリエ内にしゃれたレストランが豊富にあるため、観劇後も外に移動する必要もない。雨に打たれることもなく、観劇後の余韻が冷めないうちに食事が楽しめることが知的体験価値を向上している点にも注目すべきだ。

成功するシニアビジネスの教科書
高齢者住宅新聞

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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