日本経済新聞夕刊 2015年9月2日 読み解き現代消費
エクスペリエンス・エコノミー(体験経済)とは
エクスペリエンス・エコノミー(体験経済)という言葉がある。顧客にとっての「体験」こそが経済価値になるという考えだ。体験経済においては、コモディティー、製品、サービス、体験の順で価値は上がっていく。
例えばコーヒーの値段は、コーヒーを巡る体験の中身によって変わる。どこにでもあるコーヒー豆をバラ売りすると、コモディティーとなり1杯分当たりの価格は1円にしかならない。それをパッケージにして売ると1杯分当たり20円に上がる。
さらに、豆をひき、カップにいれて提供すると1杯当たり400円になる。さらに、高級ホテルのラウンジでサービスすれば1000円になる、という具合だ。
体験経済を取り入れて大成功したのがスターバックス
これに目をつけて大成功したのがスターバックスである。初期段階は豆の販売から始め、次に立ち飲み店に進出。その後、家(第一の場所)でも職場(第二の場所)でもない「第三の場所」を提供するというコンセプトを取り入れ現在のスタイルを確立した。
コーヒー以外の価値も提供している。たとえば、店内の無線LANはスターバックスが先駆的に始めたサービスだ。
渋谷のヒカリエにある東急シアターオーブは良い例
このように、その場の体験価値を上げれば、価格が多少割高でも、顧客は受け入れる。シニア顧客相手でも、客単価を上げるにはどういう体験価値が満足度を上げるのかを考えることが重要だ。
東京・渋谷のヒカリエにある東急シアターオーブはその良い例だ。他の類似劇場と異なり、ブロードウェイのミュージカルが日本人の劇団ではないオリジナルの劇団で見られ、本物感がある。渋谷駅から劇場までエレベーターで直結しているため、足腰の弱ったシニアでも来場しやすい。
ヒカリエ内にしゃれたレストランが豊富にあるため、観劇後も外に移動する必要もない。雨に打たれることもなく、観劇後の余韻が冷めないうちに食事が楽しめることが知的体験価値を向上している点に注目だ。
成功するシニアビジネスの教科書