自社の強みから差異化を考えよ 既存市場でいかに勝負するか

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高齢者住宅新聞 介護保険に頼らないシニアビジネス成功の12のヒント 第4回

市場調査に頼るな

多くの企業は、シニアビジネスを始める時に市場調査から入る。しかし、市場調査の結果、有望なビジネスの芽を見つけられたとしても、必要な経営資源が自社に乏しく、断念することがしばしばある。

したがって、新事業を企画する場合は、自社の強みが何で、それをどう活用すれば市場で差異化できるかを徹底的に考えていく方が近道だ。

旅行会社・クラブツーリズムの情報誌を配布する有償ボランティア活動「エコースタッフ」がその一例だ。クラブツーリズムには、シニア世代を中心に公称300万世帯、700万人もの会員がいる。

会員と言っても会費は無料。一度でもクラブツーリズムの旅行に参加すれば自動的に会員として登録される。エコースタッフは、もともと皆クラブツーリズムの会員だ。

旅行好きな会員が自社の会員誌を配布する事業モデル

クラブツーリズムでは、旅行情報誌「旅の友」を毎月会員に無料で配布する。その際、郵送より安いメール便に加えて、エコースタッフの手を借りて、スタッフの自宅周辺の会員に手渡しもする。エコースタッフは、雑誌を渡しながら、共通の趣味である旅行の話題で話が弾みつつ、配布先の家族の状況などマーケティング情報も把握する。

エコースタッフは一回250部程度配布すると、10,000円程度の収入を得られる。好きな旅行絡みの仕事でちょっとした小遣いが稼げるため、シニア会員に大変な人気がある。首都圏で7000名程度のエコースタッフが活躍している。

この仕組みによる「旅の友」の配送コストは、エコースタッフへの支払いを含めても、メール便よりも安くできるのがミソだ。コストを安くできるだけでなく、顧客がクラブツーリズムに対してより高いロイヤルティを持つようになり、結果として旅行への参加頻度も上がる。

この仕組みなどは、まさにシニアが顧客主体のクラブツーリズムの強みを活かした独自の差異化と言えよう。

成功するシニアビジネスの教科書

高齢者住宅新聞

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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