中高年のノスタルジー消費 ワクワク感をもう一度

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日本経済新聞夕刊 2016年5月11日 読み解き現代消費

ノスタルジー消費と呼ぶ消費形態は主に40代以上の年齢層に表れる

中高年になると過ぎ去った時代を懐かしむ気持ちから何かを買ってしまうことがある。例えば、たまたま立ち寄った喫茶店で高校時代に好きだった曲を聴いたのがきっかけでCDを買った。大学時代に属していた音楽サークルの定期演奏会に足を運び、30年ぶりに演奏を聴いたのが刺激になり新たに楽器を購入した、といった具合だ。

私が「ノスタルジー消費」と呼ぶこの消費形態は、主に40代以上の年齢層に表れる。例えば大ヒットした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」。封切りされた2005年当時、この映画を最も見たのは40代以上の人たちだった。なぜ、ノスタルジー消費は40代以上なのだろうか。

一般に20代から30代までは学校卒業、就職、転勤、結婚、引っ越し、出産、育児と変化の連続で、しかも初めてのことが多い。こうした変化に富んだ生活は予想がしづらく、夢中で取り組むがゆえにわくわく、ドキドキする機会も多い。

一方、40代を超えると、仕事や生活に慣れ、前述の変化が少なくなる。生活が平板化するためわくわくする機会が減りがちだ。この反動で新たな刺激を求めたくなるのがこの年齢層なのだ。

ノスタルジー消費は認知機能レベルと世代原体験の組み合わせで表れる

私たちは加齢とともに脳機能が衰え、記憶の容量が減っていく。新しいことの学習が難しくおっくうになり、昔なじんだものを求める傾向が強くなっていく。その際、20歳ごろまでに経験した「世代原体験」の影響を受けやすい。

原体験は世代で異なる。例えば団塊世代ならカレッジフォーク、ビートルズ、ジーンズといったアメリカ文化が中心だ。その上の焼け跡世代なら学童疎開、闇市、国民学校といった戦中期の体験である。

ノスタルジー消費はその人の認知機能レベルと世代原体験との組み合わせで表れる。こうした理解は中高年向けの商品開発のみならず、認知症ケアの現場でも役に立つ。

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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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