シニアシフトは企業存続の鍵

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朝日新聞大阪本社 シニア層のメディア接触と生活意識調査

朝日新聞大阪本社が発行する企業向け冊子「シニア層のメディア接触と生活意識調査」に、私へのインタビューに基づく記事が掲載されました。

余談ですが、この表紙のタイトルは、私が付けたものではありません。「シニアを動かす」ではなく、「シニアは動く」が正しい認識だと思います。その人が「これはいい商品だ」「こんなサービスを待っていたんだよ」と思えば、顧客は自ずと動くものです。

加速するシニアシフトが消費市場を変える

団塊の世代が65歳を迎え、超高齢社会に突入した日本の社会では、2つのシニアシフトが注目されています。ひとつは、人口のピークが若者中心から高齢者中心にシフトする「人口動態のシニアシフト」。

もうひとつは、企業がターゲットの顧客を若者中心から高齢者中心にシフトする「企業活動のシニアシフト」。シニアシフトはこの先も、長期に渡って継続していきます。

これからは、収入の少ない若者よりシニア層が社会の多くの市場で存在感が増します。企業活動のシニアシフトは、企業存続の大切な鍵であり、この流れに対応できない企業には将来の成長は望めません。

ここ10年から5年ほどの間にシニアシフトの重要性に気づいて業態の改革を行い、成果をあげている企業がいくつも出てきています。たとえば、紙おむつの市場は2013年には大人用が1,650億円となり、赤ちゃん用市場を抜きました。国内の大手メーカーは、大人用の紙おむつの新製品を開発し、飛躍的に業績を伸ばしています。

また、スーパーやコンビニ、ドラッグストア、百貨店などの小売業も積極的にシニアシフトを行っています。店内にはプライベートブランドの小口総菜シリーズが目立ち、弁当コーナーには少量パックの弁当や総菜、ローカロリーでヘルシーな総菜も増え、食が細くなったり、健康に気づかったりするシニアでも買いやすい工夫がなされています。

各業界におけるシニア市場への多彩な取り組み

少子化が急速に進む現在、子どもをターゲットにビジネスを展開していた企業の多くがシニアシフトへの取り組みを始めています。子ども向けの教材をメインに取り扱っていた企業や学習塾・予備校などのなかには、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)といったシニア向け住宅事業に参入し、成功しているところもあります。

シニアの住宅に関しては、今後ますます市場規模が拡大し、その形態も多様になってきます。住まいへのニーズを見ると、大きく3段階に分けられます。

自立していてまだ元気なときに快適に暮らすためにリフォームを行う、体に不具合が出てきたらバリアフリーで対応する、介護が必要になれば有料老人ホームやサ高住などに入居する。そのときどきで求められる要件が変わってきます。これらの事業は得意分野をいかしてハウスメーカー等が注力しています。

シニアシフトにはきめ細かい対応が必要

シニアシフトに取り組んでいる企業の全てが成功しているとは限りません。たとえば洋服メーカーなどで取り組んでいる例がありますが、全体的にはまだ徹底されていないのが現状です。

下着を例にあげると、通販会社に卸しているようなメーカーはよく勉強していますが、そうでないところはゴムがきつい、脱着しにくい、などシニアの体の変化を無視した製品を作っているなど失敗も多くみられます。皮膚が敏感で体力が衰えているシニアが身につけるものは、品質面での細かい配慮が求められます。

また、売り方に問題がある場合もあります。カタログでターゲット顧客よりも若くてきれいなモデルを使っているため、自分が着たときのイメージが違いすぎて返品することも多いのです。そしてターゲット顧客の細やかな変化を考えず、画一的なカタログを送りつけるというやり方では、消費者の気持ちは動きません。

シニア向け事業で失敗する原因のひとつは、ビジネスに携わる人が若くてシニアの気持ちを汲み取れないことです。年上の人がどう思っているかを理解するのは、なかなか難しいですが、普段から年配の人と付き合うことで徐々にわかってくることもありますので、意識して訓練すると良いと思います。

シニアの消費は一人ひとり異なり、皆が同じものを求めているわけではありません。収入、趣味、嗜好、地域、家族構成などによって微妙に違うニーズに、きめ細かい対応をできる企業がシニアシフトに成功しているのです。

企業活動のシニアシフトに求められている要件

これからシニアシフトに取り組もうとしている企業に求められるのは、経営者の姿勢だと思います。短期間ではなく、将来を見越して長いスパンで考えていく。闇雲にではなく、まず自社のどのようなリソースを使って事業をするのか、そこからのスタートです。自社で扱う素材やノウハウといった、独自の強みを生かして新規事業を展開するのが効率的です。

また、ひざや腰などの身体の機能が衰えると自分で外出するのが難しくなっていきます。したがって、サービス提供者にとってこれからは家が「主戦場」になります。すでに弁当宅配などはで顧客の家に商圏を広げていますが、これ以外の生活支援サービスもどんどん顧客の家が提供先になっていくでしょう。

ターゲットとなる消費者の行動を把握し、真に求められているサービスを提供する。それを柔軟に行える企業だけが伸びていける時代です。シニアシフトの流れに乗り遅れることなく、すぐにアクションをとることをおすすめします。

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