2009年9月30日 地銀協月報9月号 特集 地方銀行のシニアビジネス
シニア市場とは、マス・マーケットではなく「多様なミクロ市場の集合体」
本来、シニアという言葉に「60歳以上の人」といった特定の年齢層を指す意味はないが、本稿では便宜的にシニアを「60歳以上の人」と定義し、シニア市場を「60歳以上の人が使い手または担い手となる商品・サービスの市場」と定義する。
かつて市場のボリュームゾーンとされてきた団塊世代(1947年~49年生まれ)が含まれることもあり、多くの企業はシニア市場を巨大なマス・マーケットと見なしがちだ。だが、シニア市場とは、実はマス・マーケットではなく、「多様なミクロ市場の集合体」である。この「多様性市場」としての認識を誤ると市場参入してから苦戦する。
なぜ、シニア市場は「多様性市場」なのか。その理由は、シニアの消費行動の意思決定に影響を及ぼす要因が極めて多様であり、結果として消費行動も多様になるからだ。
(中略)
地域金融機関は高齢化を武器に新たな成長戦略を描くことができる
地域金融機関は高齢化を武器に新たな成長戦略を描くことができる。 筆者は、日本はシニアビジネスで世界のリーダーになれると真面目に考えている。それは次の二つの理由からである。
第一に、日本は、高齢化の課題が世界のどこよりも早く顕在化する「課題先進国」であること。これは裏返せば、ビジネスチャンスが世界のどこよりも早く顕在化することを意味する。だから、常に世界に先駆けて商品化でき、いち早く市場に投入できる優位性がある。
もう一つは、繰り返しになるが、シニア市場とは多様な価値観をもった人たちが形成する「多様なミクロ市場の集合体」であること。この「多様性市場」には、きめ細かな対応力が求められるが、日本の集積化技術と日本人の細やかな情緒感覚がこの対応力を強める。
このように、日本はシニアビジネス分野で他国に対して優位に立てる素地を十分に持っている。日本の地域金融機関は目先の景気変動だけにとらわれず、地域のシニアから世界の高齢化動向まで視野を広め、取引先の先回り戦略を支援することで、新たな成長戦略を描くことができるのである。