Clinic ばんぶう5月号連載 データから読むイマドキ「シニア」の実態第10回
キーワードは「小型・軽量・健康・安心・手軽・高品質」
社会の高齢化が進むと、一人暮らし世帯が増えます。この世帯が求める価値は「小型(小口)」「軽量」「健康」「安心」「手軽」「高品質」の6つです。
「小口化健康志向」は、現在コンビニやスーパー各社が進めている商品戦略の柱です。セブンイレブンの小口総菜「セブンプレミアム」がその代表。サバのみそ煮、ひじきの煮物、けんちん汁などの総菜を、100~500円程度の価格帯で品揃えしています。
また、イオンの子会社の「オリジン弁当」、イオン葛西店などで見られる「一人用刺身」「小ロデザート」なども一人暮らし世帯をターゲットとした商品です。
一人暮らしのシニアが食事ごとに料理をするのはかなり面倒なので、「手軽」に「少量」で「健康にいい」という価値があれば、多少値段が高くても消費者は買います。
シニア対応家電もそうした例です。タイガー魔法瓶の土鍋コーティング、IH炊飯ジャー3合炊き、三菱電機の「本炭窯」「備長炭炭炊釜」シリーズの3・5合炊きがその例です。これらはすべてお茶碗1杯分からごはんを炊けるのがミソ。少量でも「炭窯で炊いた」「土鍋で炊いた」ような味わいのごはんを楽しめる高品質さが売れている理由です。
掃除機では、パナソニックの「プチサイクロン」が「小型・軽量・高性能」で売れています。小さく、軽くて操作しやすいにもかかわらず、高性能でゴミも捨てやすいというのが、シニアの一人暮らし世帯の気持ちをつかんでいるのです。
一方、一人暮らし世帯でなくても、「一人で楽しみたい」という人たちもかなり存在します。旅行会社のクラブツーリズムが提供する「ララの旅」は、そうした「一人で参加して楽しみたい人」向けの「おひとり参加限定」の旅行商品です。
ただし、「おひとり参加限定」と言っても、独身や未亡人でないとダメという意味ではありません。あくまで旅行への参加が一人、という意味です。「夫と旅行してもつまらないから、一人で参加する」という高齢女性も結構いるために、それなりの引き合いがあります。
ララの旅で人気があるのは、一人では行きにくい所への旅。たとえば、古い温泉旅館などでは、中高年の女性客が一人で行くと、旅館の人から「この人は何をしに来たのだろう、自殺でもされたら困る」といぶかしがられることもあります。また、沖縄のようなビーチリゾートはI人では行きづらい。こうした行先でもツアーなら行きやすくなるのです。
「一人でも楽しめる」という価値が、実はシニア市場では大きな需要があるのです。