2025年3月24日 熊本日日新聞 ほか
歩行などの有酸素運動は要介護の要因になる認知症や脳卒中予防に効果
共同通信から私への取材を基にしたコメントが、全国の地方紙に掲載されました。記事の内容は、自治体が市民の介護予防の一環として、民間企業のアプリや歩行の質の分析器を活用して、これまで運動していなかった人に運動習慣をつけてもらう取り組みを紹介したもの。記事の冒頭に次の通り私のコメントが引用されています。
いつまでも健脚でいたい。そんなシニア世代の願いをサポートするアプリや歩行計測機器が充実してきている。仲間と目標を持って散歩に臨んだり、正しい歩き方を学んだり―。専門家は「健脚は、人の世話にならない自立した生活を送るための必要条件だ」として、こうした仕組みの活用も勧める。
2つの事例紹介の後に、次の通りコメントが引用されています。
高齢社会を研究し、シニアビジネスに多数関わる東北大スマート・エイジング学際重点研究センター特任教授の村田裕之さんは「歩行などの有酸素運動は、要介護の要因になる認知症や脳卒中予防に効果があるとされている」とした上で、「うれしい気持ちが起こるともっとやりたくなり、精神的な健康につながる」とし、社会的孤立を防ぐ上でも有効だと指摘した。
なお、4月6日時点で掲載が確認されているのは次の地方紙です。
- 熊本日日新聞3月24日付:介護予防 仲間と健脚づくり
- 下野新聞3月24日付:シニアの健脚をサポート アプリ活用仲間と散歩/歩く力維持へ「質」確認
- 静岡新聞3月27日付:健脚の願いをサポート アプリ活用し仲間と散歩
- 中部経済新聞3月27日付:シニアの健脚の願いサポート アプリ活用し、仲間と散歩 歩行の「質」も重要に
- 高知新聞3月27日付:アプリで「いつまでも健脚」仲間とつながり目標共有
- 山陰中央新報3月27日付:「いつまでも健脚」サポート 仲間と散歩、歩行の質確認 アプリや分析機器活用
- 岩手日報3月28日付:元気の源 健脚サポート アプリで散歩習慣化
アプリは報酬系理論に基づき「元気」や「やる気」を感じさせるもの
記事中で取り上げられているアプリは、スタートアップのエーテンラボが開発した「みんチャレ」。社名のエーテンとは、A10、つまり脳の報酬系を司っているA10神経から取ったもの。
報酬系の働きについては、拙著「スマート・エイジング」で詳細に説明していますが、何かを達成したときや誰かに褒められたときに、この神経系に「ドーパミン」という神経伝達物質が放出され、私たちに「元気」や「やる気」を感じさせます。
みんチャレも、報酬系理論に基づき、「元気」や「やる気」を感じさせ、行動を習慣化させるためのアプリです。
健脚つくりという「目的行動」を「習慣行動」に変えることが必要
健脚つくりを毎日続けるようになるには、健脚つくりという「目的行動」を「習慣行動」に変えることが必要です。では、どうすれば習慣行動化できるのでしょうか?
ある目的行動を行うかどうかの判断の際、私たちは、①その行動による価値・恩恵がどの程度あるのかと、②その行動を取るための手間やコスト、時間、心的エネルギーなどがどの程度必要かを天秤にかけ判断します。
したがって、①が大きく、②が小さいほど、その目的行動は実施されやすく、継続されやすくなります。
みんチャレをはじめ、行動変容アプリと呼ばれるものは、全てこの点を熟慮してデザインされています。

自治体主導の介護予防の課題とは
記事で紹介されている熊本県水俣市の取り組みも、自治体の介護予防予算を使って民間企業に委託して行ったもの。参加者である市民は、通常無料で参加できるため、予算執行期間中は、多くが参加を継続します。
ところが、予算執行期間が終了すると、プロジェクトがなくなります。すると参加者もせっかく続けていた運動習慣を継続しなくなる、ということが頻繁に見られます。
先の説明における「②その行動を取るためのコスト」が、ゼロだったのが自腹になった瞬間、継続しなくなるのです。
この課題への対策は、自治体のプロジェクト期間中に「①その行動による価値・恩恵」を最大化し、自腹でも継続したくなるようにすることです。
つまり、アプリによる価値・恩恵に加えて「アプリ以外」による価値・恩恵のプロデュースが必要と言えます。
「アプリ以外」による価値・恩恵とは、どのようなものがあるのかを知る
