月刊シニアビジネスマーケット 2021年2月号[特集]有識者・オピニオンリーダーに聞くシニアビジネス2021
過剰な感染対策が健康二次被害を拡大
コロナ渦で生活スタイルの変化にさらされた結果、多くのアクティブシニアで「健康二次被害」が広がっている。
外出自粛による運動不足で下半身が弱くなる。コミュニケーションが減ることで認知機能が衰える。自宅での飲酒量や間食が増えることでメタボになる。先行き不安が強まることでうつや不眠症になる。新型コロナウイルス感染症には罹患しない代わりに健康が悪化する例が増えている。
これに対して健康二次被害を食い止めようと運動サービスへのニーズが高まっている。コロナ渦で朝晩にウォーキングするシニア人口が増えたのはその一端だ。
また、スポーツジムは一部の事例がもとでクラスターのイメージを持たれたため、利用人口は一時的に減ったが回復傾向にある。同時に「おうちでカーブス」のようにシム運営会社が会員向けに自宅で運動できるサービスを提供する例も増えている。
一方、ステイホームで家飲みが増えるとどうしても量が増えがちだ。すると糖質ゼロのビールなど糖分を抑えるとともに可処分所得の少なめなシニア向けに低価格なものが増えている。
不眠症対策商品もよく売れている。シニアの場合、早朝覚醒と中途覚醒が頻繁に起きる。前者は早起きしてウォーキングするなどで何とかなるが、後者は熟眠感の不足につながる。これを受けて睡眠促進のサプリや寝室関連商品がよく売れている。
だが、睡眠対策商品の大半は「期待型商品」であり、必ずしも効果が得られない。運動をする習慣、他人と交流する習慣、バランスのよい栄養習慣を維持することが睡眠の質を上げるためにより重要だ。
withコロナでスマート・エイジングを支援する商品ニーズが高まる
これらの習慣に脳を使う習慣を加えた4つは、筆者が15年前から言い続けている「スマート・エイジング」の考え方そのものだ。つまり、コロナ渦でスマート・エイジングに対するニーズが一段と高まっているのだ。
政府・自治体が「高齢者は感染すると重症化しやすい」と高齢者を十把一絡げに扱う発言をし続けているため、ジムに行かないどころか外出も控え気味になりがちだ。だが、東京都のデータ等を見ると、重症化リスクの高いのは実は「高齢の人」ではなく「基礎疾患を持っている人」だ。高齢の人でも基礎疾患のない健康な人は存在する。
過剰な自粛で運動不足やコミュニケーション不足になって健康二次被害を拡大するより、感染予防策をしっかり講じている場所で適度に運動を行い、他人と交流することが重要だ。
そうした行動により前向きな気持ちになり、基礎疾患を改善・予防できれば、むしろ感染症による重症化リスクも下げることができる。
これらを踏まえると、21年以降は長引くコロナ渦で拡大する「健康二次被害」を食い止める商品がより求められる。それはウィズコロナ環境下でのスマート・エイジング支援商品に他ならない。
こうした商品提供のためには有象無象の情報が氾濫する状況から、正確に理解して活用できる力「コロナ・リテラシー」の向上が商品提供側に不可欠だ。