日本経済新聞 2014年2月14日
シニアといっても世代原体験によって嗜好は全く違う
日経朝刊消費面の「今どきシニア★夜型 60代、消費活発 仕事帰り、店へ街へ 」という記事で、以下の通りコメントが掲載されました。
ビデオリサーチが首都圏の60代を対象にした調査では、午前0時以前に寝る人の割合は69.4%と10年前に比べ6.1ポイント減り、午前0~5時は7.2ポイント増の29.7%となった。
東北大学の村田裕之特任教授は「シニアといっても世代原体験によって嗜好は全く違う。働くシニアが今後、増えれば夜型消費は大きく伸びる可能性がある」と話す。
新聞紙面はスペースに限りがあるので、この記事の背景を補足します。
シニアの夜型消費は次の4つ
実際多くのシニアの方との交流をもとに整理すると、シニアの夜型消費は次に類型化されます。
- 孤独解消消費
- ノスタルジー消費
- 時間解放消費
- 情報収集・人脈維持型消費
2のノスタルジー消費とは世代原体験が懐かしくて生まれる消費形態のことをいいます。世代原体験とは、20歳までの文化体験で、世代特有の嗜好性の多くはこれによって形成されます。世代原体験には食生活、文学、音楽、映画、漫画、テレビ番組、ファッション、スポーツなどがあります。
シニアといっても、世代ごとに嗜好性の違いがあるので、各世代の幼少期から20歳までの文化・世相を知っておくと当該顧客と接する時の消費行動を理解する一助になります。
(1) 団塊の世代(1947年1月1日から1949年12月31日生、現在64歳~66歳):カレッジフォーク、ビートルズ、グループサウンズ、VAN、ジーンズ、ミニスカートなどアメリカ文化
(2) 焼け跡世代(1935年1月1日から1946年12月31日生、現在67歳~78歳):学童疎開、火垂るの墓、闇市、国民学校、墨塗り教科書、連合国軍占領下、戦後混乱期、青い山脈
(3) 昭和一桁世代(1926年12月25日から1934年12月31日生、現在79歳~86歳):戦争・軍国主義・飢餓体験、価値転換、リンゴの唄
(4) 大正世代(1912年7月30日から1926年12月25日生、現在87歳~101歳):大正ロマン、昭和モダン、歌謡曲、洋服、洋食文化
ノスタルジー消費の例としては、生演奏付きのバー、レストランなどで、六本木のビートルズ演奏のバンドレストラン、雑司が谷のボサノバ・バー、などいろいろあります。若い頃に聴いていた音楽に懐かしく浸りながら、楽しい時間を過ごすものです。
3の時間解放型消費とは、子育て終了や転勤、退職などをきっかけに時間の拘束からの解放で起こる消費形態です。昔やっていたことにもう一度取り組むことで自分らしさを取り戻そうとすることで、音楽バンド演奏やソーシャルダンスなどが典型的です。
4の情報収集・人脈維持型消費とは、退職後の情報不足・コミュニケーション不足を補完するもので、いろいろな講演会、勉強会などが典型例です。私自身も時々こうした会での講演を頼まれたりします。
こうした会に出た後の食事会も重要で、銀座のライオンなどはシニアが大好きな場所の例です。また、クラシック音楽の演奏会や劇場での映画鑑賞は、圧倒的にシニア層が多く、理由は1だったり、2だったり、4だったりします。
シニアの夜型消費を見るうえでの注意点は、①シニアといっても世代原体験によって嗜好性が異なること、②健康で自立した生活ができる人とそうでない人とでは消費行動は異なること、③経済状況によって異なることです。上記に挙げた例は、主に中より上のアッパーミドル層のものです。
今後どうなっていくかは、対象とする顧客層の健康状態、そして基本となる5つの変化がどうなっているかで決まります。