読売新聞 近畿版 2013年11月10日朝刊
介護は現役世代の問題
「元気だった親がある日突然、脳梗塞で倒れて入院、退院後介護が必要になって……」「ちょっと会話がかみ合わないなと思っていたら、認知症で見守りが必要になって……」。仕事に忙しい40〜50代の現役世代が、自分の親の介護について切実な悩みを抱えていることも多い昨今です。
介護保険で要介護認定を受けている人は494万人。そのうちの84%が75歳以上です(※1)。入院や通院で治療を受ける「受療率」、認知症の「出現率」なども70歳以降は急増。介護の必要性が大きくなっています(※2)。
一方、働きながら介護している人は290万人に上り、うち40〜50代は約6割(※3)。今や介護は親世代だけの問題ではなく、子どもである「現役世代とその家族の問題」でもあるのです。
親が70歳を過ぎたら備えよう
とはいえ40〜50代の現役世代は、切実な問題に直面するまでは介護の知識に乏しいのが現実です。かくいう私も、高齢者の認知症改善・予防の普及活動に関わっていながら、当事者になるまで親の介護はどこか他人ごとのように思っていました。
しかし「待ったなし」の状況の中で不要なトラブルを避け、円滑に対応するには、親が70歳を過ぎたら、こうした問題にも備えておくことが望まれます。
介護保険開始以降、情報もあふれるようになりました。しかしその中から「自分が必要とする、有益な情報」を探し出すのはなかなか難しいものです。親戚・近所の人・友人の親など、自分が見聞きしたケースに関心を持ち、どう対応すべきか、情報の引き出しを増やしておきましょう。
また、細かい点はともかく、どんな手立てが必要か、どこに相談したらよいかを事前に知っていれば、いざというときの対応法も違ってくるはずです。
親世代も日頃から備えを
一方、親世代もできるだけ健康で自立した生活を送れるよう、日頃から注意したいものです。要介護状態になる主要因の一つは転倒による骨折。元気でいるためには下半身を鍛えるトレーニングが欠かせません。高齢者が自発的に継続して取り組める実践手法を開発・普及させていくことが、行政や企業に今後より一層求められるでしょう。
仕事を続けることも「介護予防」の秘訣です。「健康維持」と割り切って収入にこだわらずに仕事を見つけてはいかがでしょうか。仕事を続けることで生活リズムを保ち、人との会話を通して社会とのつながりを維持することもでき、「一挙三得」の効果があります。
いずれにしても「漠然とした将来の不安」の中身を明らかにし、それに備えることで不安はかなり解消できるもの。親子の良好な関係を維持し、互いにハッピーであるためにも、対応法を知って近い将来に備えることが求められます。
※1 厚労省要介護(要支援)認定者数、2010年7月
※2 受療率:厚労省患者調査、2008年認知症出現率:厚労省「1994年 痴呆性老人対策に関する検討会報告」
※3 総務省就業構造基本調査、2013年7月
参考文献:親が70歳を過ぎたら読む本