いまシニアに旅がオススメな理由

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夕刊フジ230212

夕刊フジ2月12日号「食と健康 ホントの話」

旅の効用:知的刺激・対話・歩く量が増える

暦の上では春だが、寒さはまだ続く。そんなときに始めたいのが、今年の旅行計画だ。とくにこれまではコロナが心配で出かけられなかったシニアこそ、感染対策を心がけながらぜひ旅行を楽しんでもらいたい。

高齢社会研究の第一人者である、東北大学特任教授で村田アソシエイツ代表取締役の村田裕之氏によると、シニアに旅行をオススメな理由はおもに3つ

①知的刺激が増える
②対話が増える
③歩く量が増える

旅行は非日常なので、今まで見たことのない風景を見るなど①の知的刺激が増える。②は、たとえ一人旅でも家にいるよりは確実に対話が増える。家族や友人と出かければなおさらだ。知的刺激と対話が増えると脳を使うため、認知症予防にはもってこいだ。

③についても体力に自信がなくても旅行だといつもより歩くことが、万歩計などでよくわかる

旅は「スマート・エイジング」に大きく貢献する

これらの理由は、村田氏が提唱する「スマート・エイジング」にも大いに寄与する。似たような言葉にアンチ・エイジングがあり、こちらは抗老化、若返りの意味で使われているが、実は誤っているという。

健康ではいたいけれども、見た目をよくするイメージが先行してしっくりこない、という人もいるだろう。

スマート・エイジングとは、加齢に賢く適応し、成長し続ける生き方です。本来、齢を加えるのは人間の発達過程です。そのため、実はある条件を満たすと、私たちはいつまでも成長できるのです」

もちろん不老不死を目指すことは不可能だが、人それぞれの身体のポテンシャルをしっかり引き出せば、死ぬまで成長することは可能なはずだ。

スマート・エイジングのための「ある条件」とは、次の4つの習慣をもつことだ。

1)脳を使う習慣
2)運動する習慣
3)バランスのとれた栄養を摂る習慣
4)人と交流する習慣

これを先のシニアの旅行のメリットと比べると、3)以外は重なる。3)についても、毎日同じような食事をしていたり、好き嫌いが激しい人でも、旅先であればその土地の名物を食べたり、旅館などで出されるものを全部平らげたりすることはよくあることだ。

一人暮らしの高齢者はサルコペニアが多い

村田氏は、60代まではどちらかというと過体重、メタボな人が多いが、高齢者、とくに一人暮らしの高齢者はサルコペニア(加齢による筋肉、筋力の減少)になっている人が多いという。

サルコペニアの最大の原因は低栄養であることがわかっています。いくら運動して筋肉をつけようとしても、材料となる栄養素、タンパク質が不足していれば筋肉はつきません。

スマート・エイジングを体現するためには、まずは自立した生活ができる健康体である必要があります。そのためには、自分の健康状態に合った必要な栄養素を摂ることが大事です」

睡眠障害にはトリプトファンが含まれる大豆乳製品がおすすめ

自分に必要な栄養素を知ることはそれなりに難しいが、たとえばコロナ禍で増えたうつ病、そしてそれにともなう睡眠障害(とくに中途覚醒)に不足しているのは、脳内神経伝達物質のセロトニンだということがわかっている、と村田氏。

「うつ病と診断されるほどであれば、抗うつ薬などでセロトニンの脳内濃度を維持するべきですが、効果に個人差があります。薬を使わずに増やすためには、必須アミノ酸のトリプトファンが多く含まれる大豆製品や乳製品などを普段から積極的に摂るなど、食事で改善することは多くあります

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