挑戦する高齢者支える脳トレ

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挑戦する高齢者支える脳トレ

2021年10月22日 日経MJ連載 なるほどスマート・エイジング

高齢でも新たな挑戦が可能な人の共通点は?

高齢化率29.1%で世界一の日本では高齢期でも活動的に過ごす人が目につくようになっている。

瀧島未香さん(90)は、「日本最高齢のフィットネスインストラクター」として活躍中だが、実はスポーツジムに通い始めたのは65歳と聞く。

若宮 正子さん(86)は80代でスマートフォン「iPhone」のアプリとして「hinadan」を開発した。米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)から「世界最高齢のアプリ開発者」と紹介されたことで有名になったが、パソコンを始めたのは定年退職後という。

一般的に高齢になるにつれて、新しいことに取り組むのがおっくうになるとされる。

私たちの認知機能の一つ「作動記憶」は、一般に加齢と共に減っていくからだ。すると、新しいことの理解に必要な時間と労力が増えていく。高齢になると新しいことの学習がおっくうになるのはこれが理由だ。

高齢期になってからも新しいことに取り組むことができる人は、作動記憶の量が若い頃と同等に維持されている可能性が大きいことが共通点に挙げられる。

作動記憶量を拡大する方法

実はこの作動記憶量は「スパン課題」や「Nバック課題」といった脳のトレーニングによって拡大できることが、東北大学の研究で明らかになっている。

スパン課題とは、例えば数字を1、7、8、2……5と一つずつ見せたり聞かせたりした後に、覚えた数字をそのまま提示した順番で答えてもらったり、見たり聞いたりしたものとは逆に答えてもらったりする課題だ。

Nバック課題とは、例えば数字を、1、7、8、2……5と一つずつ見せたり聞かせたりしている最中に、2バック課題では3番目に8が出てきた瞬間に、その2つ前に出てきた数字である1と答え、4番目に2が出てきたときには、同じくその2つ前に出てきた数字7と答える。

興味深いことに、このトレーニングを続けると、脳の実行機能、予測や判断力、集中力も向上するとみられる。仕事や勉強の効率が上がったり、スポーツが上達したりと、さまざまな効果が現れることも東北大の研究で示されている。

ニッチ分野で称賛、継続の動機に

年金生活ができる高齢者にとっては多額の金銭報酬よりも、他人に認められたり、社会的注目を浴びたりする「心理的報酬」の方が、継続のモチベーションが上がりやすい。

冒頭で紹介した瀧島さんは「日本最高齢のフィットネスインストラクター」、若宮さんは「世界最高齢のプログラマー」といった「最高齢の○○」で注目を浴びている。

つまり、一般的な高齢者であれば、まだ誰もやっていない「ニッチな分野」を選ぶのがミソだ。

陸上競技などでは高齢になるにつれ参加者が限られるため、「70歳以上の部で世界記録」といった例が少なくない。「高齢者なのにここまでやるのか」と思わせる活躍の場を見つけることが作動記憶量を拡大するためのトレーニング継続の大きな動機となるといえる。

スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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