眠りの質を上げ、朝までグッスリ眠るための方法

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シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第151回

前回説明した不眠症の要因とメラトニン分泌の仕組みを考慮すると、眠りの質を上げるには入眠2時間前に次のアクションを取ることが有効です。

1.「活動モード」から「リラックスモード」に切り換える

これは寝つきをよくするための対策で、具体的には次がお勧めです。

  1. 38度ほどのぬるめのお湯に5〜30分浸かり、体をじっくり温める。
  2. 仕事場とは別の場所で照明を薄暗くして過ごす。照明は蛍光灯や白色LEDではなく、電球のような暖色系の間接照明にする。
  3. ブルーライトを避けるため、パソコン、スマホ、タブレット、テレビなどを見ない。
  4. 穏やかな音楽を聴く。聴くのは静かなクラシックやヒーリング系の音楽がよい。
  5. カフェインのない温かい飲み物を飲む。自然な眠気は体温が下がり始めるときに起きるので、寝る前に温かい飲み物を摂って内臓から体温の上昇を促し、体温低下のリズムを作ります。飲み物は温かい白湯や生姜湯、カモミールティーなどがおすすめ。カフェインを含むコーヒーや紅茶、緑茶、栄養ドリンクは飲まないことです。
  6. アロマ(植物から抽出した香り成分の精油)の香りを枕元に拡散するのもよい。

2.アルコール類(寝酒)を飲まない

これは中途覚醒を減らすための対策です。この理由は2つあります。

第一の理由は、アルコールが中途覚醒の原因になるためです。アルコール類を飲むと「脳幹網様体賦活系」と呼ばれる中枢神経の活動が抑制され、一時的に眠気を生じます。寝つきをよくするために寝酒を飲むというのは、これを期待するからです。

しかし、アルコールは抑制性の神経伝達物質であるGABAの作用も抑制するため、寝ついた後に中途覚醒が起きやすくなってしまいます。

また、アルコールには利尿作用があるため、夜中に何度もトイレに行きたくなり、中途覚醒しやすくなります。特に年配の方には頻尿が不眠症の原因になることもしばしばです。

第二の理由は、アルコール分解後のアセトアルデヒドが睡眠の質を下げるためです。

アルコール類に含まれるエチルアルコールは肝臓で、まずアセトアルデヒドになります(1次代謝)。その後、アセトアルデヒドは酢酸になり(2次代謝)、クエン酸回路になり、エネルギーと水、二酸化炭素になります。

問題なのは、このアセトアルデヒドには発がん性が指摘されるほどの毒性があることです。二日酔いはこの物質が体内に残っていると生じ、しばしば不快な頭痛や吐き気などを伴います。

中年期に肝臓のアルコール分解能力が低下してくると、飲んだアルコール類が睡眠中にアセトアルデヒドとして体内に残り、睡眠の質が下がる可能性があります。

3.激しい運動をしない

これも寝つきをよくするための対策であり、中途覚醒を起こしにくくするための対策でもあります。

一般には適度な運動により身体の疲労感があると睡眠の質が上がります。しかし、入眠前に心拍数を上げて息があがるほどの運動をすると、交感神経が優位になり、体が覚醒状態となるため睡眠を妨げてしまいます。

夜のリラックスタイムには、ストレッチや呼吸運動主体のヨガなどの軽い運動を行うのがお勧めです。

4.食事をしない

入眠前2時間以内に食事をすると、身体は消化吸収に集中することになり、睡眠時に脳や身体を休めることができなくなります。

どうしても夜遅い食事になってしまう場合には、牛乳やヨーグルトなどのたんぱく質を多く含み、消化のいい乳製品を少量摂るのがいいでしょう。牛乳は秋から冬の季節には脂肪分が高くなるので、気になる人は低脂肪のものにしてください。

自分に合った寝具を選ぶ

見落としがちな重要なポイントはです。自分の体型に合わせて高さや形状、硬さを調節できる枕がお勧めです。

私もこれまでさまざまな枕を試してきましたが、自分の体型にパーソナライズできる枕が、首痛などを防ぎ、質のよい睡眠にとって有用です。

マットレスも重要です。枕と同じように自分の体型に合わせて高さや形状、硬さを調節してくれるものがお勧めです。

こうした特殊なマットレスは通常品に比べ高価ではありますが、眠りの質の向上を考慮すれば決して高価な出費ではありません。

昼寝をするなら午後3時までの20分にする

人によっては午後の早い時間に眠気を催すことがあります。その場合、20分程度の短い昼寝を行うことによって、頭をすっきりさせ集中力や作業能力の低下を防ぐのがよいでしょう。

ただし、長時間(30分以上)の昼寝は深い眠りになってしまい、脳と体が休息モードに切り替わってしまうため逆効果になります。また、午後3時以降の夕方に眠るのは、夜の睡眠の妨げになるので避けましょう。

最近は働き方改革の影響か、昼寝を奨励する職場も現れています。オフィスに仮眠スペースを設ける会社も少しずつ増えています。街中にもカプセルホテルのような施設で昼寝スペースを提供するサービスも見かけるようになりました。

近頃は、昼間のカラオケルームを仕事場として提供したり、その中で仮眠に利用したりする人もいます。米国では「仮眠用のカプセルホテル」などもかなり増えています。とはいえ、基本は20分以内の短い昼寝が好ましく、夜の良質な睡眠を妨げるものは避けましょう。

食事やサプリでメラトニンの分泌を増やせるか?

メラトニンの原料はセロトニンなので、セロトニンを増やす栄養素を摂ればメラトニンも増えるように思われます。

しかし、セロトニンの原料のトリプトファンを2倍摂っても、セロトニンの分泌量が2倍になるわけではありません。ましてやセロトニンを原料とするメラトニンは、それ以上に食事によって分泌量を増やすのは難しいでしょう。

一方、国によってメラトニンはサプリメントで販売されています。現在それらの販売は日本では禁止されています。フランスでもしばらく前に禁止になりました。

アメリカではドラッグストアで販売されていて入手可能ですが、その効果は個人差が大きいようです。ちなみに、私も以前アメリカのドラッグストアで買ったものを使ってみたことがありますが、まったく効果がありませんでした。

ドーパミンやセロトニン同様、この種の神経伝達物質やホルモンを増やそうと思うなら、薬やサプリメントに頼らず、生活習慣で分泌を促す(メラトニンの場合は、分泌を阻害する要因を取り除く)のが王道でしょう。

参考文献:スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣

スマート・エイジング  人生100年時代を生き抜く10の秘訣 | 村田裕之の団塊・シニアビジネス・シニア市場・高齢社会の未来が学べるブログ
人生100年時代を乗り切るには加齢(エイジング)に伴う様々な変化に対する「身体と心の“適応力”」が必要です。それを私は「加齢適応力」と名付けました。本書のテーマ...
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