なぜ、シニアのSNS利用者は増えないのか?

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シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第129回

60歳以上のSNS利用者が過去4年間、2割で頭打ち

最近の総務省通信利用動向調査を眺めると面白いことに気が付く。それは、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の利用率が2013年から2016年の4年間、13歳から59歳までの年齢層では毎年上昇しているのに対し、60歳以上では20%程度で変わっていないことだ(図表1)。

一方、前掲の通信利用動向調査2016年によれば、ネット利用率は60歳から64歳で83.3%、65歳から69歳で69.4%、70歳から79歳で53.6%といずれも50%以上を超えており、決して低くない

また、スマートフォン保有率は60歳から64歳で71.6%、65歳から69歳で55.3%、70歳から79歳で36.7%と、こちらも決して低くない

にもかかわらず、60歳以上のSNS利用者が過去4年間、2割で頭打ちになっている理由は何だろうか。

60歳以上のSNS利用者が増えない「3つの理由」

1. 使い方が複雑で面倒くさい

SNSの代表であるFacebookは、ビギナーにとっては使い方が複雑で難しいという声が多い。使い方のルールが勝手にどんどん変わっていくのもこのアプリの特徴で、長年使っている筆者でも面食らうことが多い。ITリテラシーがそれほど高くない人には敷居が高い。

2. 利用者に知人が少ない

SNSは交流する相手がいないと機能しない。退職して活動が減り気味な人には継続して交流する相手が少ないのがネックとなる。

3. リアルの交流の方がいい

どのSNSでもタイムラインに大量の情報があふれており、それが鬱陶しいという声も根強い。若年層でさえ「SNS疲れ」でアプリの利用をやめていく人は多い。シニアの場合は、ネットでの交流よりリアルでの交流の方がいいという人が多いようだ。

総じていえば、業務上利用せざる得ない場合を除き、シニアがSNSを使わなければならない必然性は少ないと言える。

ポケモンGOに見るシニアに受けるアプリの条件

一方、本連載16年9月10日号ポケモンGOとシニアのコト消費・モノ消費でスマホを使うポケモンGOについて述べた。当時は「8月15日現在で50歳以上の男性の17%、女性の12%程度がプレイしている」状態だった。

しかし、1年4か月が経った現在、利用者の多くは50代と60代になっている。例えば、レイドバトルと呼ばれる複数のプレーヤーで行うバトルの際に、対象のジムに集まる人たちの顔ぶれは、ほとんどが50代以上のおじさん、おばさんなのだ

ポケモンGOがシニアに人気の理由として次が考えられる。

1. 操作が簡単

プレイした人はわかるが、基本操作は出没したポケモンにボールを投げてぶつけるだけ。この簡単さのためにシニアでも継続しやすい。

また、バトルの際の操作も基本的にスマホをタッチするかスワイプ(画面上で指を横に滑らせる)するだけ。もちろん、ポケモンの種類に応じて投げ方を変える工夫が必要だが、それでも操作としてはかなりシンプルだ。

2. 組み合わせが多く、適度な工夫が求められる

ポケモンの種類が第三世代まででも383種類もあり、それぞれがどういう相手に強いか弱いかがルール化されており、バトルの際にはこれを工夫する必要がある。操作は簡単だが、組み合わせが多く、適度な工夫が求められる点が好まれている。

3. ポケコインが稼げる

ジムに置いた自分のポケモンが1日当たり8時間20分防衛できると50ポケコイン(約50円)がもらえる仕組みになっている。ポケコインは換金不可だが、ゲームに必要な道具を買うことができる。

1日当たり50円という小さな金額だが、毎日コツコツためるとそれなりの金額になり、お金を支払わなくても楽しむことができる。

このようにシニアはわずかな額でもポイントがもらえるサービスは利用する傾向が強い

4. 仲間ができる

複数人数でプレイするレイドバトルの様子を眺めていると、集まってきた見知らぬ人同士で会話が進むことが多い。退職後は人付き合いが減りがちなシニアにとって仲間ができるきっかけは有益だ。

ポケモンGOはSNSではないが、シニアが継続利用したくなる要素が多いので参考になるはずだ。シニアはスマホが使いにくいのではない。使いたくなるアプリならスマホでも利用するのだ。商品・サービス提供者にはさらなる工夫が求められる。

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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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