シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第102回
キーワードは「小型・軽量・健康・安心・手軽・高品質」
社会の高齢化が進むと一人暮らし世帯が増える。この世帯が求める価値のキーワードは「小型(小口)」「軽量」「健康」「安心」「手軽」「高品質」だ。
小口化健康志向は、現在コンビニやスーパー各社が進めている商品戦略の柱である。セブン-イレブンの小口総菜「セブンプレミアム」がその代表だ。サバの味噌煮、ポテトサラダ、ひじきの煮物、けんちん汁、牛タンシチューなどの総菜を、100~500円程度の価格帯で品揃えしている。
また、イオンの子会社の「オリジン弁当」、イオン葛西店などで見られる「一人用刺身」「小口デザート」なども一人暮らし世帯をターゲットとした商品だ。
一方、雑誌「いきいき」のロングセラー商品、「ふくふくの人参ジュース」は健康志向を訴求したものである。有機栽培の人参を原料とした1リットルのビンに入ったトローっとしたジュースは、一般の人参ジュースとは趣が違う。
食物繊維を豊富に含み、「おいしくて、身体が軽く、スッキリ、快適になる」というのが人気の秘密だ。値段は、3本組3599円、6本組み6994円(どちらも税込)と高めですが、根強い人気のロングセラーとなっている。
一人暮らしの年配者が、有機栽培の人参ジュースを自宅で都度作るのはかなり面倒くさいので、「手軽」に「高品質」で「健康にいい」という価値が、多少値段が高くても消費者に買わせるのだ。
売れる家電は“一人用”サイズ
家電メーカーのシニア対応商品開発は遅れていたが、ようやく少しずつ増えてきた。一人用サイズで美味しくご飯が炊ける小型炊飯器がその一例である。
タイガー魔法瓶は、2014年1月より、土鍋コーティング、IH炊飯ジャーに新たに3合炊きをラインナップに加えた。三菱電機も2014年2月より、従来10合炊き、5.5合炊きで展開していた「本炭窯」「備長炭炭炊釜」「炭炊釜」シリーズに3.5合炊きを追加した。
これらは全てお茶碗一杯分からご飯を炊ける一人用サイズだ。少量だが、「炭窯で炊いた」「土鍋で炊いた」ような味わいのご飯を楽しめるという高品質が売れている理由である。
コーヒーメーカーにも1杯ずつ抽出できるものが登場している。2013年12月より発売のUCC上島珈琲「ペリカプラス」は、エコポッドという1杯分の豆を入れた特殊容器を使うことで、カップ一杯分でも本格的なドリップコーヒーを楽しめる。ボタンを押すだけで、50秒でできあがるという使い勝手の良さ、手間がかからないのに味は本格的というのがうけている理由だ。
掃除機では、パナソニックの「プチサイクロン」が、「小型・軽量・高性能」で売れている。小さく、軽くて操作しやすいにもかかわらず、高性能でゴミも捨てやすいというのが、シニアの一人暮らし世帯の気持ちをつかんでいる。
旦那と旅行してもつまらないから一人で参加する旅
実は一人暮らし世帯でなくても、「一人で楽しみたい」という人たちもかなり存在する。旅行会社のクラブツーリズムが提供している「ララの旅」は、そのような「一人で参加して楽しみたい人」向けの「おひとり参加限定」の旅行商品である。
ただし、「おひとり参加限定」といっても、独身や未亡人でないとダメという意味ではない。あくまでも旅行への参加は一人で、という意味だ。「旦那と旅行してもつまらないから、一人で参加する」という高齢女性も結構いるために、こうしたニーズの受け皿にしているのだ。
内容はさまざまで、コンサート、芸術鑑賞などのエンターテインメント型旅行、講師が同行していろいろな散歩を楽しむ「ララ散歩」、毎月の誕生日の人を集める「誕生日交流会」などの工夫を凝らしています。
ララの旅で人気があるのは、一人では行きにくい所への旅だ。たとえば、古い温泉旅館などでは、中高年の女性客が一人で行くと、旅館の人から「この人は何しに来たのだろう?自殺でもされたら困る」といぶかしがられることもある。また、沖縄のようなビーチリゾート的なところは、一人では行きづらい。こうした形態のツアーなら行きやすくなる。
「一人でも楽しめる」商品はシニア市場では大きな需要があることを知っておこう。