JP総研Research 2015年3月第29号
アンチエイジングとは生きていることの否定、つまり死ぬという意味
日本郵政グループ労働組合 JP総合研究所が発行するJP総研Researchの最新号に「アンチエイジングではなく、スマート・エイジング」を寄稿しました。
今回の寄稿依頼は、昨年12月2日に日本生産性本部の主催で行われた「情報化シンポジウム・イン・京都」で「超高齢・人口減少社会に必要なスマート・エイジング」と題して講演した際、それをお聴きになっていたJP総合研究所の方からご依頼を受けたものです。
内容は講演でよくお話ししている「自分らしく元気にいきいきと過ごすための7つの秘訣」の抜粋版になっています。以下に前文を掲載します。
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皆さんは「アンチエイジング」の意味をご存知ですか?私が講演などで尋ねると、たいてい「若返りの技術」とか「年をとらないための方法」という答えが返ってきます。果たして正解はどうでしょうか。「エイジング」は、英語でageing(米語ではaging)と書きます。ageは「年をとる」という動詞、ingは動詞の進行形です。したがって、エイジングとは「年をとっていく、齢(よわい)を加える」という意味です。日本語では加齢と言います。
エイジングは、受精した瞬間からあの世に行くまで、高齢者だけでなく、すべての世代の人が生きている限り続きます。つまり、エイジングとは生きていることの証しです。一方、アンチは英語で否定を意味する接頭語です。したがって、アンチエイジングとは、生きていることの否定。つまり死ぬという意味になります。若返りの逆ですね。
なぜ、「アンチエイジング」などという言葉が世に出てきたのでしょうか。この言葉は西洋、特にアメリカから来た言葉です。西洋には18世紀の産業革命以降、人間を精密機械のように見なす価値観が根強くあります。機械は時間がたつと錆びついたり、部品が壊れたりして老朽化していきます。人間は細かい機械のかたまりのようなものなので、機械と同じように時間がたつと、体のあちこちに不具合が出て、老朽化していく。こういう見方が根強いのです。
このため、人間も年をとると、あたかも機械と同じように錆びついて老朽化し、その社会的価値が下がっていくとみなすわけです。だから、年をとることはよくないことだとして、それをくい止める(実際はくい止められないのですが)薬やサプリメント、医療技術を「アンチエイジング商品」と謳って大々的に宣伝し続けているのです。
ただし、アメリカにもこうした見方は年齢差別主義(エイジズム)で、間違っていると考える人が大勢います。しかし、そうした良識派の声は、アンチエイジング商品で儲けたい商業主義者の声にかき消されがちです。そして、それがそのまま日本に持ち込まれているのが実情です。
ちなみに、私は別に顔のしわを目立たせない化粧品や肌のつやが増すサプリメントが悪いと言っているわけではありません。ただ、それらはあくまで「しわ隠し」や「つや出し」であり、それらをアンチエイジングと呼ぶことが変だと言っているのです。
以上の背景から、私の所属する東北大学加齢医学研究所では「スマート・エイジング」という言葉を提唱しています。スマートは「賢い」なので、スマート・エイジングは「賢く齢を加えていく」という意味です。
年をとるにつれ、私たちは体や心などがいろいろな面で変化します。こうした変化は私たちにとって辛いことが多いのが現実です。しかし、そういう変化にもっと賢く対処する生き方を選びましょう。そして、それを考え続けることで、私たちはもっと成長しましょう。そういう意味合いを込めたのが、このスマート・エイジングという言葉なのです。
本稿では、スマート・エイジングをいかにして日々の生活の中で実践していくかの秘訣をかいつまんでお話しします。
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前文に続いて次の項目が続きます。
脳と運動器維持、介護予防が重要
筋トレを実行する
前頭前野を鍛えて認知症予防
仕事を通じて年金以外の収入を得る
誰かの役に立つ
具体的な目標を持つ
元気なうちに情報収集
情報が欲しければ自分から発信
自分らしく生きるには
学び続ける勧め
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