人生100年時代の社会課題解決を「産・学・民」で共創

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カーブス東北大学片平SAテストベッドの様子

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第176回

東北大学とカーブスジャパンとの新たな共同研究開始

東北大学加齢医学研究所と女性専用フィットネス最大手の㈱カーブスジャパンは、サーキットトレーニングスマート・エイジングの4条件(認知・運動・栄養・社会性)に及ぼす影響を包括的に検証する共同研究を開始した。

スマート・エイジングは筆者が2006年に提唱したもので、「加齢による経年変化に賢く『適応』して知的に成熟する」という生き方を指す。「加齢(エイジング)」に対する「適応力」を身に着ける生き方とも言える。

サーキットトレーニングは、高齢者でも取り組みやすく、認知症予防や認知機能リハビリなどへの応用が期待されている。カーブスでは一回30分で30秒の筋力トレーニングと30秒の有酸素運動を交互に行っている。

加齢医学研究所は、これまでカーブスジャパンとの共同研究において、4週間のサーキットトレーニングが、高齢者の実行機能、エピソード記憶、処理速度など広範囲な認知機能を改善することを明らかにしてきた。

4週間という短期間でも広範囲な認知機能が改善することを見出した点、および高齢者を対象とした無作為比較対照試験である点から、従来にない画期的な研究成果として、米国エイジング協会発行の論文 AGE に採択された。

また、中高年期女性を対象に無作為比較対照試験を用いてサーキットトレーニングの即時的な効果の検証も行った。

その結果、1回30分のサーキットトレーニングを実施したグループは、何もしないで30分待機していたグループと比較して、認知力(抑制能力)とポジティブ気分(活力)が即時的に向上することを明らかにした。この研究成果は加齢神経分野の学術誌にも掲載された。

男性も対象に検証、男女間の特徴を考慮した健康増進手法を開発予定

一方、サーキットトレーニングはこれまで女性を対象にしたものがほとんどだった。

運動習慣を有する人は、男性(33.4%)の方が女性(25.1%)よりも多いにもかかわらず、男性は各種健康指標が低く、健康に対する意識が低いと言われている(令和元年「国民健康・栄養調査」)。

そこで本共同研究では女性に加えて男性も対象とし、無作為化比較試験と長期フォローアップ計測を行う計画だ。

サーキットトレーニングの実施が「身体的健康(高血圧・BMIなど生活習慣病のリスク)」「社会的健康(孤独感の度合いなど)」「精神的健康(抑うつの度合いなど)」「認知的健康(軽度認知障害(MCI)になるリスク)」に及ぼす影響を包括的に検証する。

これにより、男女間の特徴を明らかにしたうえで、人生100年時代に求められる中高年が継続しやすい健康増進手法を開発し、一人ひとりの生活習慣の改善と健康づくりを促進する。あわせて社会保障費の抑制に寄与することで、持続可能な健康長寿社会の実現を目指す。

市民参加型テストベッドによる新たな産学連携のスタイル

今回の共同研究は仙台市の中心部にある東北大学片平キャンパスに新たに開設した「スマートエイジング・テストベッド」において実施する。テストベッドとは元々試験台という意味で、転じて新しい試みを行うプラットフォームの意味をもつ。

テストベッドの研究面での意義は①市民ニーズを迅速に反映した研究開発・商品化ができる、②若手研究者と年配者との交流が増えて研究の質が上がる、③学術的知見を迅速に反映したサービス提供ができることだ。

一方、社会面での意義は、これまで大学と縁の薄かった市民がテストベッドを通じて研究活動へ関与でき、社会課題の解決に貢献しながら、自身もより健康になれることだ。

プレスリリース

スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授、シンクタンク・ソフィアバンク アソシエイツ、エイジング・アジア国際アドバイザー、シンガポール工科デザイン大学 国際アドバイザー。

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

2004年に世界最大の高齢者NPO AARPがロンドンで開催した国際会議に、唯一の日本人パネリストとして招聘されて以来、スイスでの世界エイジング・世代問題会議にチェアマンとして招聘、シンガポール政府主催SICEX2008の基調講演者に招聘されるなど多くの国際的な活動に取り組んでいる。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「GLOBAL AGEING INFLUENCERS」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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