いかにしてシニア顧客にリーチするか(1) アウトバウンドよりインバウンドを促す

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シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第91

「営業は足とド根性」は過去の話

企業の担当者からよく受ける質問の一つに「シニアの顧客にリーチするのにどうするのが一番よいか?」というのがある。このような質問をしてくる人は、消費者に対する直接の接触チャネルを持っていない製造業系の会社の人が多い。今回から数回に渡り、シニア顧客に対する賢いアプローチの仕方についてお話しする。

シニア顧客にリーチする方法として、アウトバウンドとインバウンドがある。アウトバウンドとは企業から顧客にアプローチすること、インバウンドとは、顧客から企業にアプローチすることを指す。

インバウンドには顧客から質問や相談の形で問い合わせが来ることも含む。企業からの売り込み電話、DM送付、チラシの投げ込みなどはアウトバウンドで、コールセンターなどに来る問い合わせがインバウンドになる。

シニアビジネスでは、必死でアウトバウンドをするより、どのようにすればインバウンドが増えるかを考えるべきだ。

一昔前までは、「営業は足とド根性だ」ということで、足を棒にして、アポも取らず飛び込み営業を数多く行うのが良いとされた。100件訪問しても5件注文がとれればOK、という具合である。つまり、ノルマである5件の注文を取るためには何件も回るのが美徳とされた。

ところが最近は100件回っても、アポなしの飛び込み営業では注文はなかなか取れなくなった。賢くなった消費者は、営業を受ける意識も変わっている。体力と根性で数をこなせば売れる時代ではなくなったのだ。

売り込みの電話はかければかけるほど好感度が下がる

電話によるセールスも同じである。未だに多くの企業が電話による「飛び込みセールス」を行っているが、消費者は頻繁にかかってくる電話での売り込みにうんざりしているのが実情だ。

相手との接触回数を増やせば増やすほど親近感が湧いてくるという考えもあるが、売り込みの電話はかければかけるほど、その企業に対する好感度は間違いなく下がる。

チラシによるセールスの場合、セキュリティの厳しいマンションなどでは直接訪問できないので、一階にあるメールボックスにチラシを投げ込むことになる。

しかし、そのチラシの情報が消費者に伝わることは非常に少ないだろう。多くのマンションでは、メールボックスの脇にくずかごが設置されている。居住者は必要な情報と不要な情報とをその場で仕分ける。

数多くのチラシは、そこでくずかご行きとなってしまう。宛名のないものでくずかご行きにならないのは、「○○市だより」のような行政から来る冊子ぐらいのものだ。

このようなアプローチは非常に効率が悪い。それでも「やらないよりは、やった方がまし」ということで続けているのだろうが、こうしたやり方には工夫が見られない。

潜在顧客と直接やり取りできるコールセンターやメールが重要

このような「数打ちゃ当たる式」のアウトバウンドではなく、消費者が探し求めている時にタイミングよく、相手が欲しがっている情報を提供する方がよほど効率的である。

顧客から商品提供側への問い合わせに対して適切に対応できる体制を整え、そうした問い合わせ、つまりインバウンドを促すことが重要だ。だから、潜在顧客と直接声でやり取りができるコールセンターや、問い合わせが飛び込んでくるメールが非常に重要になる。

私自身もいろいろな企業のコールセンターに電話で問い合わせをするが、コールセンターの対応次第で、その企業に対する印象が大きく変わる。そして、その印象が、その企業の製品に対するイメージに重なってしまうのである。これは大変怖いことだ。

図表は調査会社のJDパワー社が毎年発表しているコールセンター満足度調査の結果だ。これを見ると、どの業界がコールセンターでの対応に注力しているのかがわかる。

インターネット通販による買い物が増える時代では、店舗での販売だけでなく、ネットショップでの販売のウェイトも上がっていく。それゆえ、コールセンターの位置づけが一段と重要になる。

つまり、コールセンターを単なる問い合わせ窓口とするのではなく、顧客の潜在ニーズをキャッチするアンテナ機能と位置づけることが重要だ。

そこに寄せられる顧客からの情報で、商品開発の芽を獲得したり、商品の改良に役立てたり、さらには、より効果的な販売方法を見つけ出すことも可能になる。このようなインバウンド重視の意識がある企業は、自前のコールセンターを持ち、オペレータもしっかりした訓練を行っている。

私が知る限り、独占的立場にある企業ほど、コールセンターの対応がお粗末だ。競争の激しい業界の中での優良企業は、しっかりした対応ができるコールセンターを持っている。

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