2006年6月13日 AARP Global Aging Program Idea Exchange
世界中の有識者とのアイデア交換で知見を吸収するAARPのスタイル
2004年のロンドンでの国際会議以降、AARPとの交流が急増しました。2006年6月13日にAARP Global Aging Program Idea Exchange の講師として招待され、ワシントン本部で講演しました。その時の講演録が早速AARPのウェブサイトPolicy & Research に掲載されています。
AARPのサイトは、3500万人を越える50歳以上の会員だけでなく、世界中の関係者が閲覧するところで、その影響力は相当なものがあります。
AARPという組織の“凄み”はどこにあるか
掲載された自分の講演録を読んで、予想外に感服したことが三つあります。 第一に、自分の舌足らずの英語スピーチが、見事な英文にブラッシュアップされていること。第二に、あまり詳細を説明できなかった商品やサービスについて本人が語った以上の詳細な説明が追加されていること。そして、第三に、この講演録がAARPにとっての知的財産として自動的に蓄積されていくことです。
一見何気なく見えますが、AARPという組織の“凄み”を感じるのは、実はこういうところです。
AARPにアメリカ以外の各国の高齢化事情を研究する「グローバル・エイジング・プログラム」ができたのが、現在のビル・ノベリ会長就任後の2002年のこと。以来、世界各国の高齢化にまつわる多くの情報収集活動を行っていますが、近年とりわけ関心の高い国は日本です。
講演は、日本では講師が一方的に話すのが一般的なスタイルですが、アメリカではしばしば聴衆が講師に数多くの質問を浴びせる場となります。私も数多くの質問を受けました。しかし、実はその質問者のなかに、ある役割を担う実務スタッフが何人もいたのです。
それは、こちらの話の趣旨を咀嚼して、その背景をきちんとリサーチした上で、読みやすく整理された文章にまとめあげることです。
日本におけるAARPの一般的イメージ
日本におけるAARPの一般的イメージは、50歳以上の会員3500万人を有する世界最大の高齢者NPOであり、会員向けに保険や旅行商品を効率的に売りさばくマーケティングマシーンであり、上院議員が最も恐れるロビー団体である、といったものが多いようです。
昔から日本の労働団体や高齢者団体を中心に多くの日本人がAARPを訪れています。しかし、その大半が「AARP詣」と呼ばれ、視察という名の実質「観光旅行」にとどまっていました。
このために、前述のような一般的なイメージはあっても、その組織の具体的な実態がどのようなものかは理解されていないことが多かったのです。
設立後60年近い歴史があり、本部だけで2000人以上のスタッフを有する巨大組織AARPは、その活動規模と実績だけでも十分に大きな影響力を周囲に及ぼします。
しかし、あらゆる情報収集の機会を惜しまず、討議をとおして自分達にとって良いアイデアを貪欲なまでに吸収しようとする姿勢は、世界最大の巨大組織というイメージとは正反対の、オープンで謙虚なスタッフの実態なのです。
AARPの力の源泉が何かを知ることができたのが、今回の講演のもう一つの成果でした。