高齢者の就労を促すには何が必要か 制度面とサービス面

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年齢別就業率変化

2024年6月12日 毎日新聞 

政府発表の骨太原案に「高齢者の労働参加率の上昇ペース継続が必要」と記載

毎日新聞に私への取材を基にしたコメントが掲載されました。

記事の背景は、岸田文雄首相が11日に首相官邸で開いた経済財政諮問会議で「意欲のある人が年齢・性別にかかわらず、自由で柔軟に活躍できる社会を構築していく」と強調していることです。

高齢者らの労働参加の拡大の必要性を訴え、政府発表の骨太原案にも「高齢者の労働参加率の上昇ペース継続が必要」としています。

記事中で、高齢者の就労をめぐる企業とのミスマッチについての内閣府の20年調査結果の後に、次の通り紹介されています。

シニア向けビジネスに詳しい東北大の村田裕之特任教授は「高齢者は食わず嫌いもあるので、求人と求職のミスマッチは根強くある」として、単発の就労機会を増やすため政府によるルール作りの必要性を説く。

高齢者の労働参加のネックとなっているのは賃金と厚生年金の合計額が月50万円を超えた場合、超過額の半額を厚生年金額からカットする「在職老齢年金」だ。「月50万円を超えてまで働いても損するだけなので、働かない人がいる。例えば月70万円まで引き上げ、増えた20万円分は消費する条件にすれば経済成長にもインパクトがある」と提案する。

以下に記事で引用されたコメントを補足します。

在職老齢年金の上限額引き上げが制度面での優先対策

現状の在職老齢年金の仕組みでは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、「老齢厚生年金の月額」と「月給・賞与(直近1年間の賞与の1/12)」の合計額が50万円を超えると、年金が減額されます。

また、例えば65歳以降の在職老齢年金による支給率が平均して60%(支給停止部分が40%)という人の場合、本来65歳で受給手続することにより受け取れるはずの老齢厚生年金のうち60%の部分が、繰下げ受給による増額の対象となります。

このような制度のために、働いても年金が減額されるなら働く意味がないと思う人が多く、高齢者の就労意欲を妨げている大きな要因となっています。

単発就労(トライアル)機会増やして求人と求職とのミスマッチを減らす

高齢者の就労阻害要因の一つが、求職者がやりたいこと/やりがいを感じることと、求人側が必要とすることが必ずしも一致しないことにあります。

従来の求人求職マッチングの場として、ハローワーク、シルバー人材センターがあります。しかし、これらの場では求人数とその選択肢が少なく、条件も低めのため、あまり有用でありませんでした。

これに対して、求人情報サイトは年々進化しており、例えば「タイミー」は、スマホのアプリでスキマ時間を使った「単発就労機会」を提供し、65歳以上も5.1万人(本年3月現在)利用しています。

この仕組みでは、自分の都合の良い時間、自宅のそば、幅広い職種から選べるという選択肢の広さ、面接や登録なしですぐ働ける、お金は即日入金される、などの利便性が受けています。

この仕組みがシニアに受けている理由の一つは、単発就労機会による「トライアル就労」ができる点です。これにより、正規の就職前にその業界や職種との相性が合うかを確認できるステップがあることです。

実際、単発就労がきっかけで長期就業に転向した人もそれなりにいて、飲食、ホテル・旅館、物流、介護・保育などの業種での就業例も相当数あるとのことです。

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