高齢者住宅新聞 介護保険に頼らないシニアビジネス成功の12のヒント 第12回
メイク不要の環境を支持
私が2003年3月に日本に初めて紹介した「カーブス(Curves)」というアメリカ生まれの女性専用フィットネスクラブ・チェーンは、ターゲットである中高年女性の不満を徹底的に解消することで成功した好例である。
その頃の既存のフィットネスクラブでは、「駅に近い交通便利なロケーション」「充実した温浴設備」「各種トレーニングマシンを配備」「立派なプール」「広いスペース」などを売りとするのが典型的だった。
ところが、当時のフィットネスクラブの利用者は総人口の3%にも満たなかった。特に中高年女性に利用をやめた理由を尋ねると、次のような声が聞こえてきた。
(1)男性に自分が運動している姿を見られたくない
(2)一回2~3時間は必要
(3)月額一万円ほどの利用料は高い
(4)マシンがずらりと並んでいる機械的な雰囲気がイヤだ
(5)自分が運動する姿を鏡で見たくない
カーブスは、こうした不満を一つひとつ、つぶした結果、次のようなサービス・コンセプトになった。
(1)若者中心 → 中高年女性中心
(2)一回2~3時間 → 一回30分=短時間
(3)月額一万円 → 月額5700円(税別)=低料金
(4)ジムに行くのに化粧が必要 → 化粧不要=省時間
(5)おもり器具の縦列=男性向け → 油圧器具のサーキット=女性向け
(6)痩せることが目的 → 健康になることが目的
女性しかいないので化粧も不要で、利用者には時間の節約にもなる。こうしたコンセプトを、「ノー・メン」「ノー・ミラー」「ノー・メイクアップ」の「3ノーM」として訴求し、既存のフィットネスジムに不満を持っていた中高年女性から支持を得たのである。
このような中高年女性の不を徹底的に解消したカーブスは2016年4月現在1675店舗、会員数74万人にまで成長した。2005年7月に直営1号店をオープンしてから10年9か月という短期間での急成長は、世界各国のカーブスからも驚きの目で見られている。もちろん、利用者は、公的介護保険は一切利用せず自費で賄っている。