2013年3月22日 スマート・エイジング・カレッジ第一期生 村田ゼミ
「親が70歳を過ぎたら読む本」をテキストに有志でゼミを開催
3月22日午前中に昨年四月から始まった東北大学スマート・エイジング・カレッジ第一期生の修了式が行われました。その午後に私が担当したゼミの最終回を行い、夕方に受講生からの提案で、懇親会を開催いただきました。写真はその時のものです。
ゼミは、拙著「親が70歳を過ぎたら読む本」をテキストとしたものです。ただし、70歳を超えた人でも参加できるように「親が70歳を過ぎたら親子で考えること」というテーマ名にして、昨年11月からスタートしました。
「親が70歳を過ぎたら読む本」は、相続、介護、認知症、成年後見といった高齢の親に関わるトラブルをいかに予防するかというのがテーマです。これをもとに、ゼミでは毎回受講生が二人ずつ、こうした分野に関わるご自身の体験をプレゼンし、それをケーススタディとして皆で討論するというスタイルにしました。
毎回精神のエネルギーが必要、真剣勝負の連続、終わるとヘトヘトだったゼミ
主催者の自分が言うのも何ですが、このゼミのテーマは決してわくわくする楽しいものではありません。しかもどのケースも個人のプライバシーに深くかかわるものであり、当初はこのゼミは本当に成り立つのか不安がありました。
受講生の年齢は一番年上が70代後半、一番若い方が30代とまさに親と子あるいは孫のような年齢差のある集団。しかも、上述のテーマのゼミをやるとの呼びかけで自発的に参加する人たちは、皆それぞれに何らかの心の課題を抱えている方ばかりです。
親の介護、家族との確執、配偶者との離婚や死別、ご自身の大病などの辛い体験を経て、家族とは、生きるとは、人間とは、といった根源的な思考と自己との葛藤を通じて、心のエネルギーを深めてきた方々です。
私は、親の高齢期の課題解決には世代間の対話が必要なのだと常日頃主張してきました。しかし、言うは易し、行うは難し。こうした深い心のエネルギーをお持ちの方々と正面から対峙するのは、毎回真剣勝負の連続でした。
受講生一人一人の発表は、どれも多くの要素が複雑に絡み合ったもので、一つとして同じものはありませんでした。それは、結局、人の一生には一つとして同じものがないことに起因します。また、発表者によって発表スキルに差があり、なかなか一回の発表で全貌を把握しきれないことも多々ありました。
こうした状況のなかで、発表者のプレゼンをケーススタディとして、毎回生産的で有意義な討論を続けるのは、私にもかなりの精神のエネルギーを求められました。正直、毎回ゼミが終わるとへとへとになっていました。
本質的なテーマを通じて世代間で真摯に討論することの素晴らしさ
しかし、発表者の皆さんの勇気あるプレゼンと受講生の皆さんの真摯な討論への参加によって、会を重ねるごとに友情あふれる素晴らしい集まりとなっていきました。
わずか5カ月のゼミでしたが、私は、本質的なテーマを通じて世代間で真摯に討論することの素晴らしさを素直に感じました。そして、やる気さえあれば、人はいくつになっても学ぶことで成長できることを、ゼミの受講生の皆さんの姿を見て改めて思いました。
これこそが、まさに「スマート・エイジング」の実践であり、そうした場をつくれたことが、このゼミを実施した何よりの意義であります。もしかしたら、誰よりも学ぶことができたのは、実は私自身かもしれません。素晴らしいゼミ一期生の皆さん、本当にありがとうございました。
また、カレッジ運営とゼミ運営を裏方として、いろいろと支えてくれた鈴木聖子さん、一年間大変お疲れ様でした。そして、カレッジ教頭としていろいろと奮闘いただいた荒木剛先生、カレッジ校長として全体指揮と運営をいただいた川島隆太先生にも厚くお礼申し上げます。