定年後、ひとり自由に働くナノコーポという選択

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2004年9月23日  日経マスターズ10月号 スペシャルリポート

「これまで長い間、大きな組織で、他人のために仕事をしてきました。でも、これからは、自分のために働く自由が欲しかったのです―」

リチャード・スミスさん(五七歳)は、最近、二七年勤めた大手金融機関アメリカン・エキスプレスを辞め、自分の会社を起こした。社員はスミスさん一人のナノコーポだ。

金融業界で営業をしていた経験を生かし、新会社では個人の顧客に資産運用のアドバイスをしたり、ライフプランの相談に乗っている。

大手広告代理店ヤング・アンド・ルビコムで長く製作部門を担当し、上級副社長まで務めたマービン・ウォルドマンさん(五八歳)は、五四歳のときに、二五年間勤めた会社を辞め、自分の広告会社を立ち上げた。

ウォルドマンさんの会社も社長である社員は社長であるウォルドマンさん一人。かつては大手企業を相手に仕事をしていたが、現在はNPOや中小の民間企業を顧客に抱え、広告制作にあたっている。

米国では、スミスさんやウォルドマンさんのように大企業を辞めてそのままリタイアするのではなく、自らナノコーポを起こして働き続けるシニアが増えている。 ナノコーポの特徴は、旧来型の会社組織に属さず、自分のこれまでのキャリアを活かし、自分のやりたい仕事で収入を得て、働き続ける点にある。

ナノコーポという言葉には、「あくまで自分サイズの事業規模にこだわり、拡大を目指さない」という意味が込められているという。

(本文より抜粋)

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