特殊紫外線ランプでカラオケルームをより安全に

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まねきねこ渋谷本店での記者会見の様子

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第171回

コロナ禍でダメージを受ける「退職者の第三の場所」

私はかつて拙著「シニアビジネス」「退職者のための第三の場所」という考え方を提唱した。退職後に毎日行くところがないという不満・不便の解消がビジネスになるからだ。

その後社会の高齢化の進展で、若者向けの場だったカラオケにシニアが行くようになり、カラオケは「退職者のための第三の場所」の代表になった。

ところがコロナ禍で「カラオケはクラスター発生」のイメージが強まり、行政による行動規制の対象とされ、退職シニアはほとんど来店しなくなっている。

一方で長期の行動規制で国民の間にストレスが溜まっており、緊急事態宣言が形骸化している。必要なのは感染予防と経済活動の両立を可能とする具体的な感染対策だ。

特殊紫外線ランプで空気感染リスクを低減する

私が役員を務める東北大学ナレッジキャストカラオケ大手のコシダカオーク製作所は共同で特殊紫外線ランプを用いた「除菌・ウイルス不活化機器」を開発した(写真)。

新型コロナウイルス不活化を目的とした紫外線照射機は既にいくつか市場にある。だがそれらの中で実際の利用現場状況に即してウイルス等の不活化検証や運用検証がなされているものは極めて少ない。

今回の共同開発は①紫外線照射実験による科学的根拠の検証、②カラオケルームでの殺菌効果の検証と運営手順・安全性の検証、③特殊紫外線ランプの採用、が特長だ。

① 東北大学での紫外線照射実験による科学的根拠の検証

紫外線のうち波長100~280nmのUV-Cは除菌・ウイルス不活化力が高い。UV-Cによる新型コロナウイルス不活化効果に関する情報は十分ではないが、実験室レベルでは新型コロナウイルスの99.9%の不活化に必要な紫外線線量は、大腸菌やバクテリオファージウイルスを99%死滅させるのに必要な線量よりも少ない3分の1程度であることが報告されている。

このため大腸菌やバクテリオファージウイルスを99%死滅させる紫外線線量を指標にUV-Cを照射することで、新型コロナウイルスを99.9%以上不活化できることが期待できる。

東北大学大学院生命科学研究科の協力により大腸菌とバクテリオファージウイルスを99%死滅・不活化させる照射線量がそれぞれ6.5 mJ/cm2、12 mJ/cm2であることを同定した。

この数値を照射基準線量値とし、広範囲に均一に、かつ短時間で照射基準線量を照射できる特殊紫外線ランプを開発した。

② カラオケルームでの大腸菌殺菌効果の検証と運営手順・安全性の検証

実際にコシダカの異なる広さのカラオケルーム(S、M、L)をモデルルームとして大腸菌死滅線量評価プレートをルーム内の壁、床、天井、中央部等に設置後、特殊紫外線ランプを照射し、大腸菌の生存率を測定した。

これによりモデルルーム内で人が移動、触れる可能性の高い位置、地点で大腸菌が99%以上死滅する設置・照射条件を決定した。

③ 特殊紫外線ランプの採用

紫外線ランプには石英ガラスに酸化チタンを均質に混ぜ合わせた特殊なガラス管を採用した。通常の殺菌灯に比べ2倍以上の出力が得られる、ガラスが紫外線劣化しにくく、肉厚が確保でき破損リスクを低減できる等の特長がある。

空気感染リスクを低減してシニアの活動を維持する

開発した特殊紫外線ランプを用いた除菌・ウイルス不活化機器は、実際の新型コロナウイルスを実空間で99.9%不活化させる効果を実証した機器ではなく、これまでの研究を基に大腸菌とバクテリオファージウイルスが限定された実験条件下で99%死滅する照射線量を指標に開発した機器だ。

だがこれまで報告されている実験的データより、顧客のカラオケルーム利用後にUV-Cを基準量照射してルーム内の除菌・ウイルス不活化を行うことで、清掃スタッフと次の顧客への空気感染を防ぎ、クラスター発生の連鎖を断ち切る効果は十分に期待できる。

本機器は、カラオケルームのみならず、高齢者施設、飲食店(レストラン、居酒屋等)、ホテル、公民館などの公共施設での新型コロナウイルス感染リスク低減策としても期待される。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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