ポケモンGOに見るコロナ禍での柔軟なルール変更の重要性

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以前は100人以上集まったが今は閑散としている「レイドバトル会場」

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第160回

スマホゲームの「ポケモンGO」が登場して4年が過ぎた。多くのスマホゲームは登場後2か月で衰退すると言われてきたので、4年以上経過しても人気を維持しているのは驚異的と言える。

実は本年1月頃からの新型コロナウイルス感染症の拡大で、このビジネスも例外なく大きな影響を受けた。

だが、この大きな社会変化に対して、商品コンセプトの変更も含む様々な工夫を施し、利用者(プレーヤーという)を逃がさないようにしてきた。今回はその工夫の勘所を解説する。

「リモートレイドパス」の導入

このゲームの魅力の一つは、街中にある「ジム」に出現する「ボスポケモン」を複数のプレーヤーが一緒に倒す「レイドバトル」だ。従来このためにジムのすぐそばまで出向く必要があった。

だが、コロナ禍による外出自粛要請が2か月以上に渡り、かつ、他者との密接を避ける必要性が生じた。そこでジムのそばに出向かなくても参加できるようにした。

ポケモンGOの基本コンセプトは「街に出て冒険をしよう」だった。ところが、コロナ禍で実現困難となったため「街に出なくても冒険できる」にルールを変えた。

これはこのゲーム始まって以来の大きな変更だ。これに即して新たに有料の「リモートレイドパス」を苦肉の策として導入した。

ところが、これが大当たりしたのだ。多くのプレーヤーが外出自粛期間に何度も購入したため、落ち込んでいた収入が大幅に回復したのだ。

このパスを使うと自粛期間中に家の中からちょっと気晴らしにバトルに参加できる。また天気の悪い時にわざわざ外出せずにバトルに参加できる。この利便性が購入増加につながったのだ。

実はポケモンGOプレーヤーの多くは50代、60代の中高年である。外出自粛でこの年齢層が好む旅行にも行けず、お金を使う機会も減っている。このため月数千円の出費に抵抗感が無くなっていることも売上増の理由だ。

「フレンド」のレイドバトル招待機能の導入

ポケモンGOでは、様々な道具をギフトとして交換できる「フレンド」を持つことができる。ギフト交換の頻度に応じて「親友」「大親友」と格が上がる。

すると一緒にレイドバトルに参加してポケモンをやっつける際に格に応じてボールの数が増える。従来この利点しかなかった。

ところが、コロナ禍後に自分が参加するレイドバトルにフレンドを招待できるようになった。ポケモンGOはサービス開始時から人が集まりやすい都市部に有利と言われ、人が集まりにくい地方は不利だった。

だが、このルール変更により状況が変わった。例えば、東京都の池袋で開催されるレイドバトルに、新潟県の見附市に住むフレンドを招待できる。すると、そのフレンドは見附市に居ながらにして池袋でのバトルに参加し、ポケモンを入手できるのだ。

地方ではレイドバトルが開催されても、人が集まらず、プレイできないことが多い。地方のプレーヤーからはいつも文句が出ていた。

だが、この変更により都市部のフレンドが招待してくれれば、どんな地方にいてもレイドバトルに参加でき、地方のハンデがなくなる。実は招待されるフレンドの場所は地方に限らず、米国でも欧州でもスマホがつながる場所ならどこでも可能だ。

一方、地方のプレーヤーが、その地で開催のレイドバトルに都市部に住むフレンドを招待することもできる。地方ではなかなか集まらない人を、ネットワークを通じて仮想的に集められるのだ。

重要なのは、こうしたルール変更により、これまでレイドパスを使う機会があまりなかった地方のフレンドが頻繁にレイドパスを購入するようになった点だ。

また、招待側の都市部のフレンドも一緒にプレイするためにレイドパスを購入する必要があり、購入頻度が増えている点も見逃せない。

ポケモンGOを見て改めて思うのは、ゲームのルールを変えて市場環境の変化に対応していることだ。それが柔軟にできれば、コロナ禍以前にはなかった新たな売上機会も得られる。

コロナ禍で苦境に陥っている業種は、従来のビジネスのやり方にとらわれない大胆なルール変更を考えるべき。そのことをポケモンGOは示している。

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