団塊世代一斉離職は本当か?

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2006年1月11日 週刊エコノミスト1月17日号

約680万人いる団塊世代(1947~49年生まれ)の定年退職が2007年から本格化し、労働市場での労働供給減少などさまざまな問題を引き起こすという「2007年問題」への懸念が広がっている。

2007年問題が最初に指摘されたのはIT業界だ。03年にCSKの有賀貞一取締役が「団塊世代が大量に退職すれば、業務システムを熟知しているベテラン技術者が不足し、企業で使われている大型汎用機(メーンフレーム)などの基幹系システムの維持が困難になる」と問題提起し、技術継承の重要性を訴えたのがきっかけとされる。

この認識は他業界にも広がり、現在では、団塊世代の大量離職が「深刻な労働者不足や技術・技能継承や企業体力低下などの問題を引き起こす」と理解されているようだ。

しかし、これには誤解がある。07年問題は、07年から団塊世代の多くが一斉に離職するのが前提だが、筆者は実際にはそうならないと考える。このため、急激な労働力不足には陥らないとみている。理由は三つある。

(中略)

団塊の名称は、堺屋太一氏の小説『団塊の世代』(76年)に由来するが、以来、社会には「団塊世代は大きな塊である」と「ひとくくり」にみる固定観念が定着した。年代あたりの人口が他の年代に比べて多いことから、消費市場ではボリュームゾーンと見なされてきた。

しかし、高度成長時代とモノに溢れた縮小経済時代の現代とでは「市場の性質」は大きく異なる。もはや、団塊世代だというだけでは、もはや市場のボリュームゾーンにはならない。団塊世代の行動は、世代効果だけではなく、加齢による肉体の変化や、本人や家族のライフステージの変化、時代性の変化などさまざまな要因により変わっているのである。世代効果だけで個人の行動が決まるほど、現代を生きる団塊世代の人たちは、単純ではないのである。

「団塊世代はこうなる」といった短絡的な物の見方はそろそろ止めたほうがよいだろう。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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