The Daily NNA ベトナム版 6月5日号
NNA Japanが発行するThe Daily NNA ベトナム版に私のコメントが掲載されました。
国連の2017 年調査によれば、ベトナムの平均年齢は約28 歳で、日本の同46 歳と比
べると格段に若いです。
しかし、昨年私がシンガポールで開催のASEAN諸国との高齢化に関する会合で、ベトナム人研究者から「実はベトナムの高齢化スピードは日本より速い」と言われ、驚いたことを思い出しました。
今回、編集部から次の質問がありました。
ベトナム介護製品市場の可能性について、日系の高機能介護製品(車椅子、介護ベッド)メーカーに取材しました。いずれからも、介護製品市場の拡大には日本のような「介護保険」導入が必須であるとの指摘がありました。
その点は分かるのですが、現地の介護施設で「日本製は素晴らしいが高い」と何回も指摘を受け、スタッフからは「住み込みのお手伝い雇うほうが安いと思う」と言われました。
1)介護保険制度の未導入 (…メーカーの指摘)
2)労働コストの低さ (…現地施設での指摘、私の想像)
この2つの困難について、村田様はどう思われますか。指摘と想像に間違いはないでしょうか。また、これ以外に考慮すべき困難はあるでしょうか。
この質問に対して、私は次のように回答しています。
日本の介護製品事業者は、収入の大半を介護保険報酬に依存している。このため、日本では機能を沢山付けて、高価格にしても介護保険適用になれば利用者は負担が少なく、購入・レンタルできる。しかし、公的介護保険のない日本以外の国では、こうした製品は競争力がない。このため日本の事業者は国内でしか通用しないガラパゴス業者に成り下がっている。
これとは対照的に公的介護保険のあるドイツの企業は海外市場での営業に積極的だ。介護ベッドを販売しているあるドイツ企業は、日本企業とは対照的に機能を絞り込み、ドイツ製の高い品質は維持しつつ、低価格に抑えている。
ちなみに、この企業は香港最大の高齢者住宅企業が運営する高齢者住宅に多数のベッドを供給している。このように公的介護保険がある国でも、国際市場でしっかり商売をしている例がある、このことを日本の介護製品事業者は知るべきだ。
実はこのことは、先月シンガポールで開催のAAIF(Ageing Asia Innovation Forum)で強く感じたことでした。今回紙面に取り上げられている日本企業はベトナムに拠点をもち、比較的低コストでの製品化を図っているようです。
しかし、ベトナムでは日本と同様の公的介護保険は、未来永劫導入されることはないでしょう。彼らは日本のような医療・介護偏重の社会インフラを構築せずに、予防重視のアクティブエイジング型のインフラ構築に向かうのが望ましいと考えているからです。
日本企業は、公的介護保険に依存する経営を早く脱したほうがよいと改めて思います。