認知症・寝たきりを防ぐ 親のヘルスケア&チェック

からだにいいこと 新聞・雑誌
からだにいいこと

からだにいいこと 20152月号 どうする?40代からの「親とのつきあい方」 

祥伝社発行の30代、40代女性向け雑誌「からだにいいこと」2月号の特集、どうする?40代からの「親とのつきあい方」に私へのインタビューを基にした特集記事が掲載されました。

 本特集のもとになっている拙著「親が70歳を過ぎたら読む本」の冒頭部分を下記にご紹介します。

高齢期の親に関わる諸問題は「現役世代とその家族の問題」

厚労省の調査によれば、入院や外来で治療を受ける「受療率」や「要介護認定者数」は70歳を過ぎると急増しています。また、認知症の「出現率」も70歳から5歳年齢が上がるごとに倍増していきます。

このように70歳を過ぎると、病気による入院、認知症の発症、介護の必要性が増え、死亡の確率も大きくなります。その結果、老人ホームや介護施設の探索・入居、死去による遺産相続などに伴う問題が起きやすくなります。

しかし、こうした高齢期の親に関わる諸問題はすでにお気づきのように、実は親だけの問題ではありません。むしろ多くの場合、子供である「現役世代とその家族の問題」になります。

index

私の知人に近年認知症が進行した母親に翻弄されている人がいますが、彼は母の世話のために多くの時間や精神的なエネルギーを割かざるを得なくなっています。

それ以上に、実際に介護を担っている彼の奥さんへの肉体的・精神的負担が、彼の家庭を脅かすものになっています。特に親の介護をどうするか、親の死後の遺産相続をどうするかなどで、親族間で、揉めごとになるケースが後を絶ちません。

こうした揉めごとが悪化すると、場合によっては裁判にまで発展し、骨肉の争いになり、経済的負担だけでなく、親族間の絆がズタズタになり、精神的なダメージを被る例も、残念ながら見られます。

 私は縁あって、これまで中高年向けの事業開発の仕事に携わってきたため、多くの中高年・高齢者の方と接する機会がありました。私は、こうした機会を通じて、人間は年を取るにつれて若い頃には予想もしなかったさまざまな問題に遭遇し、トラブルになっていくことを目の当たりにしてきました。年少者には、年長者に起こりうる出来事が想像できないのです。

一方、私は、これまで仕事上の理由で「高齢期の親に関わる諸問題」について比較的多くのことを知る立場にありました。このため、こうしたトラブルは事前に手を打っておけば、ある程度予防できることを知りました。また、仮にトラブルが起こっても、それによるダメージを減らす方法があることも学びました。

先の知人は、「母親は医師の診断ではアルツハイマー型認知症というそうで、一番始末におえないそうだ」と言っていますが、最近の研究では、たとえアルツハイマー型認知症が発症したとしても、必ずしも始末におえないわけではありません。

たとえば、学習療法という対認知症療法があり、すでに国内でのべ14,000人の認知症の方が取り組んでおり、アルツハイマー型認知症と診断された方でも、その症状が大きく改善した例がたくさんあるのです。

こういう話を知人にすると、「そんな方法があったのですか、知りませんでした」という言葉がよく返ってきます。この知人のように、40代、50代の現役世代の人は、仕事で忙しいうえ、一般にこれらの諸問題についての知識や理解が乏しいのが現状です。そして、自分の親に何かがあって、初めてその対処に着手する人がほとんどと言っても過言ではありません。

かく言う私もそうでした。83歳の母が昨年(2010年)の春に脳梗塞で倒れて入院しました。それまで私は、仕事上、高齢者の認知症改善・予防の普及活動に関わっていながら、自分の親は幸い元気だったためか、親の介護のことは、どこか他人事のように思っていました。しかし、実際に自分の肉親が当事者になったことで、初めて私自身も当事者となり、老親に関わることが他人事ではなくなりました。

子供から成人への成長期には、小学校から大学まで必要な基礎知識や学力を身につけるための教育の場が整備されています。ところが、成人から中高年への成熟期には、自分の生活防衛のための知識や、よりよい後半生を過ごすための対処法を身につけるための教育の場は、残念ながらほとんどありません。したがって、こうした知識や対処法は独力で学ぶ以外に方法がありません。

一方、こうしたことを学ぼうと思って書店に行くと、「相続」「介護」「老人ホーム」「成年後見制度」といった個別テーマによる専門書は数多く存在します。ところが、「高齢の親とその家族が遭遇しうる諸問題」といった視点で、これらの個別テーマの勘所を横串にした書物は、なかなか見つかりません。

現役世代が生活防衛のために、よりよい人生を送るために、どんなアクションが必要なのか、その理由は何かを包括的に整理した書物が意外に少ないことに私は気がつきました。もしかしたら、先に挙げた私の知人が知りたいと思っていることは、彼以外の多くの現役世代の人も知りたがっているのではないか――この疑問が湧いたことが、本書を執筆するきっかけとなりました。

本書は、毎日忙しいなか、多くの悩みを抱えながら、必死にがんばっている40代、50代の現役世代の皆さんに「高齢期の親に関わる諸問題」に起因するトラブルをなるべく未然に防ぎ、仮にトラブルが起きても、それによるダメージを最小限に食い止めるための「対処法」をお伝えすることを試みたものです。

本書が本格化しつつある超高齢社会において、本来、不要なトラブルを起こすことなく、親子の絆を深め、良好な親族関係を構築するための「新しい生活常識」として、現役世代の方のお役に立てるなら、筆者としてこれほどうれしいことはありません。

タイトルとURLをコピーしました