2012年2月1日 日本経済新聞夕刊 らいふプラス
日本経済新聞夕刊 らいふプラスに私のコメントが次の通り掲載されました。
東北大学加齢医学研究所の村田裕之特任教授は「ポットの使用頻度やガスの使用量などから異常を検知するサービスもあるが、緊急時に駆けつける人がいなければ意味がない。近くに親族や友人がいなければ、自治会役員や民生委員に頼むなど、日頃から地域の人との交流を大切にしておきたい」と助言する。
NTTドコモが開発した「つながりほっとサポート」
記事では以前ご紹介した座間市とNTTドコモとの高齢者地域見守りの社会実験に関する取材記事も掲載されています。この実験ではNTTドコモが開発した「つながりほっとサポート」というサービスが使用されています。以下に、このサービスについて補足をします。
いわゆる高齢者の見守りサービスは、従来多くの種類が存在しています。とりわけ、昨年夏の猛暑で都市部を中心に独居高齢者の孤独死が多数発見されたことから、見守りサービスに対する社会的ニーズが一段と高まりました。しかし、こうしたニーズの高まりにもかかわらず、サービスの提供形態やビジネスモデルに課題があり、なかなか普及していないのが現状です。
従来のサービス形態には、マホービンのお湯の水位の変化を検知するもの、ガス使用量の変化を検知するもの、部屋に設置したセンサーで高齢者の位置や周辺環境変化を検知するものなどがあります。しかし、これらの従来サービスには、①監視されているという心理的抵抗感が強い、②顔色が悪い、元気がないなどの体感情報が検知できない、③利用料が高く、加入手続きが面倒、などの課題がありました。「つながりほっとサポート」は、こうした課題を次の通り改善したものです。
監視されている心理的抵抗感を改善
子供側には、親に何か問題が起きる前にその前兆をキャッチしたい、そのために「見守りたい」というニーズがあります。ところが、親側には、こうした子供による「見守り」が、子供により「監視されている」という感覚を生じさせるため、利用に対する心理的抵抗感が高かったのです。
これに対して「つながりほっとサポート」では、親が日常的に携帯電話を利用すれば、特別な操作も不要で携帯電話に組み込まれた歩数計の歩数などの「間接的な」利用情報を相手方に知らせるという手段をとりました。また、親があらかじめ知らせたい相手を「自分で決定」し、利用料も親が負担します。これらの工夫により、親が「子供に監視されている」という感覚を生じさせないようにしました。
センサーではわからない体感情報を直接確認
赤外線センサーなどを用いたものでは、親が動いているかどうかを機械的に確認するだけでした。これだと、顔色が悪い、元気がない、風邪っぽい、などの体感的な様子はわかりませんでした。
「つながりほっとサポート」は携帯電話を利用しているので、子供は必要であれば、すぐに電話をかけ直接様子を確認できる。互いに遠く離れて住む親子間では、連絡頻度が少ない理由として、親は子供の仕事の邪魔をしたくないために遠慮して電話しないという場合が多いのです。一方、子供も仕事中は職場から電話しづらい面もあります。「つながりほっとサポート」では、親の活動状況を反映した四つの情報を知ることで、会話のきっかけを生みやすい仕組みとしています。
低価格・サービス申し込みの敷居を低く
従来サービスでは、センサー利用型の場合、申込時に数万円の初期費用がかかるのに加え、月額千円から千五百円程度の利用料がかかるため、年金収入に依存する高齢者には高額に感じられることが多くありました。また、申し込みの際に設置工事が必要なことも利用の敷居を高めていました。「つながりほっとサポート」では、携帯電話への加入と同時に申し込むことで、初期費用なし、月額使用料はわずか一〇五円と低額で、工事も不要です。
従来サービスがセンサー等による老親の状態のモニターに力点を置いていたのに対し、「つながりほっとサービス」は、老親との会話のきっかけづくりに力点を置いているのが最大の違いです。携帯電話の強みを十分に活かしたサービスと言えましょう。