2026年8月17日 村田裕之の活動
Lessons from Japan:日本からの学び?教訓?
8月5日の記事でお伝えした通り、9月29日にマレーシア・クアラルンプールのシャングリラ・ホテルで講演することになりました。
今回参加するのは、マレーシア財務省の政府機関KWSP主催のThe International Social Wellbeing Conference(ISWC) 2026で、基調講演とパネルディスカッションを行います。
イベント初日の冒頭に、6月に来日したアンワル・イブラヒム首相兼財務大臣、アミル・ハムザ・アジザン第二財務大臣も挨拶されます。マレーシアでは、首相が財務大臣を兼務しており、いかに財務を重視しているかがわかります。
イベント2日間のうち、私は初日の午後一番のGlobal Perspectives and Responses to the Demographic Shiftの最初のセッションでLessons from Japanと題した講演を行います。
主催者側は、私の講演内容について次の通りと記載しています。
世界有数の超高齢社会の例として、日本は人口高齢化の機会と課題に対応するための革新的なアプローチを開発してきました。このセッションでは、地域に根ざした積極的な高齢化イニシアチブが、技術とセクター横断的な協力を得て、高齢者が健康で自立し、社会的につながり続けられるようにしている様子を探ります。
世界中で進むシニアシフトがいよいよ現実化してきた
私は2012年に上梓した「シニアシフトの衝撃」のエピローグ「これから世界中で起こるシニアシフト」で、今後世界中の多くの国で高齢化が進み、日本同様に産業構造の高齢化シフトが進むと予想しました。

弊社オフィシャルサイトのトップページに世界地図を載せていますが、地図の赤い部分「以外」の地域が、2030年までに国連が定義する「高齢化社会(Ageing society)」に突入することを示しています。マレーシアも最近、高齢化社会に突入したのです。
とはいえ、マレーシアの現在の高齢化率は8.03%で、日本の50年前の1976年の水準です。

私自身が50年前に今の日本の状況を予想できたかと言えば、明らかにNOです。
しかし、今のマレーシアの人たちは、日本をはじめ隣国のシンガポールなど高齢化が進んだ国の様々な事例を知ることができ、50年前の私たちよりも社会が高齢化すると何が起きるかを想像しやすくなっていると言えます。
私たちは、未来に起こりうるネガティブな課題を直視して想像することを好まず、避ける傾向があります。原発問題しかり、地球環境問題しかり。高齢化問題もしかりです。
唯一の日本人講演者として参加する私の役割は、超々高齢社会を経験している日本の取り組みの優れた点と課題を整理して伝え、マレーシアの未来をどうすべきか検討する視座を伝えることだと思っています。
マレーシアの退職者向け制度EPFは積立方式で日本の年金の賦課方式と異なる

ところで、主催者のKWSPとは、英語でEPF(Employees Provident Fund:従業員積立基金) と呼ばれる、マレーシア財務省が管轄する公的な「強制退職積立金(公的年金)制度」の運営機関です。
マレーシアのEPFは積立方式で、日本の年金制度の賦課方式(現役世代が受給世代を支える)とは仕組みが根本的に異なります。
労働者と雇用主双方が毎月の給与から一定割合を積み立て、退職後の資金や医療・住宅費などに充てます。将来受け取るお金は給与天引き分と、勤務先からの拠出金、複利運用で得られた利息(非課税)を加えた分になります。
ちなみに、シンガポールにCPF(Central Provident Fund)と呼ばれる、国による強制預金制度があり、これと似た仕組みです。ただし、CPFの開始が1955年なのに対して、EPFは1951年なのでマレーシアの方が制度開始が早くなっています。
これは当時、シンガポールがマレーシアの州の一つで、政治的対立からマレーシアから分離・独立したのが1965年8月9日のためだからです。
私がシンガポールのCPFを紹介した次の記事は大変多く読まれており、日本人の年金に対する関心の高さを示しています。

日本でもかつて何度か「年金は賦課方式をやめて積立方式に変えろ」といった議論が起こりました。しかし、現行の賦課方式が続いている理由の一つが、積立方式に比べて所得格差による年金受給格差を緩和できることと思われます。
今回のイベントをEPFが主催する意味は、マレーシアがいずれ超高齢社会に突入する際に、現状のEPFをどのように修正するのがよいのかを検討するための材料を集めておきたいのでしょう。



