リベラルタイム25年1月号 特集「新ビジネス」最前線!
月刊誌リベラルタイム25年1月号の特集「新ビジネス最前線」に『「超高齢化」を商機に! 要注目の「シニア向けビジネス」』と題した小論を寄稿しました。このタイトルは編集部がつけたものです。
今回の小論は、編集部より「高齢者向けビジネス」というテーマで、2,500字程度で執筆してほしいとのご依頼があり、寄稿したものです。
以下、寄稿の一部抜粋を掲載します。
再び注目されるシニア市場の潜在力
ニッセイ基礎研究所の推計では24年度の60歳以上の市場は107兆円。これは22年度の国の一般会計と同じ規模だ。
総務省の家計調査2021年によれば、世帯主の正味金融資産(貯蓄から負債を引いたもの)は、40代以下マイナス、50代1,154万円に対して、60代2,323万円、70歳以上2,232万円と圧倒的に多い。
ここ数年マーケティング対象としてZ世代が注目されているが、やはりシニア市場の潜在力は大きいと言える。本稿では、シニア向けビジネスの最前線で注目の事例を取り上げ、新ビジネス成功のための勘所をお伝えする。
(中略)
アンケートやインタビューではわからないシニアの無意識を知る
私はかつて高級老人ホームの営業最前線にいたことがある。当時見学に訪れた多くのシニアの方々から「ここはとても素敵。ぜひ入居したい」との好感触のお言葉を頂いた。見学会では終始ご機嫌の様子で、アンケートへの回答内容もきわめて前向きだった。
ところが、いざ具体的な商談の場になると、ほとんどの人が急に歯切れが悪くなる。詳しく事情を尋ねると、予算の問題や家族関係の問題など様々な事情で、どうしても入居できないと呟かれた。
実は高額商品ほど、シニアのこうした「建前と本音」の反応がよく見られる。さらに言えば、詳しく話してくれた内容ですら、どこまで本音なのか疑わしいことが多々ある。
この例に限らず、一般にアンケートや個別ヒアリングの内容はあまり当てにならないと思った方がよい。こうした手法は主観評価と呼ばれ、人の「顕在意識」での判断や思考の評価しかできないためだ。
これに対して、脳活動や心拍変動などの生体信号の計測により、主観評価ではとらえられない人の「無意識」=本音を分析し、定量化する手法がニューロマーケティングだ。東北大学と日立ハイテクによるベンチャー企業㈱NeUは、そのリーディングカンパニーだ。
同社の独自開発で世界唯一の携帯型NIRS(近赤外光分析装置)により、日常の生活環境での脳活動を計測できるようになった。
NIRSに加えて、心拍変動や視線追跡などの生体指標と、反応時間などの行動指標を組み合わせて、シニア消費者の潜在ニーズや本音を引き出すことが可能だ。
既に多くの企業が、これらの結果を商品開発や広告宣伝、購買行動調査などに役立てつつある。
日本発のブレインテック(脳関連技術)が、世界中で進展するシルバーエコノミーの波を先導していく可能性を感じさせる事例だ。
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