Forbes JAPAN 25年8月号 THE REVIEW
Forbes JAPANのTHE REVIEW「狙え、外貨獲得。医療・介護・ヘルスケアは世界の富を狙えるか」に私へのインタビュー記事が掲載されました。
私以外に、筑波大学大学院の久野譜也教授、医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長へのインタビュー記事もあわせて掲載されています。
今回のインタビュー内容の背景にあるもの
編集部より「ヘルスケアや健康増進の分野で日本が海外で勝てる(外貨獲得)チャンスのありそうな、または、これから伸びが期待できそうな事業分野について話が聴きたい」との相談があり、いろいろ考えられるなかで、世界のシニア市場でも日本の食分野に大きなチャンスがあるとお話ししました。
その背景には、私が20年以上前からアメリカの数多くのリタイアメント・コミュニティを訪れて見聞きしてきた実体験があります。
リタイアメント・コミュニティは、アメリカ式の老人ホーム群で、CCRC(Continued Care Retirement Community、継続ケア付きリタイアメント・コミュニティ)とAARC(Active Adults Retirement Community、 健常高齢者向けリタイアメント・コミュニティ)の2種類があります。
割合としてはCCRCが圧倒的に多く、通常はIndependent Living(健常者向け住宅)、 Assisted Living(介助付き住宅)、 Nursing Facilities(介護施設)に、レストラン、カフェテリア、フィットネス施設、アクティビティ施設などが同一敷地にあるものです。認知症ケアに特化したMemory Support Facilitiesが付加される場合もあります。
CCRCのレストランの利用者の大半は、まだ介護や介助が不要な元気な高齢者です。高級型になると、レストランだけでも4か所以上ある場合もあり、様々なメニューを楽しめるようになっています。
個室や共用施設の広さやゴージャスさに比べ、食事の質が低いアメリカの高級型CCRC
しかし、多くの高級型CCRCを訪問して感じたのは、居室や共用施設の広さやゴージャスさに比べた食事の質のプアさでした。
味も盛り付けも単調・大雑把で、日本人にはすぐ飽きる内容のものが多かったです。せっかく素材はあるのに、料理のレシピが味気ないものが多く、もったいないなあ、と思ったものです。
当のアメリカの高齢者は、そうした「アメリカ標準」の美味しくない料理に慣れていたこともあり、不平不満を言う人も少なかったようです。
一度、高級CCRC訪問時のランチに寿司が出てきたことがありました。驚いたと同時に、おもてなしの気持ちに心が温かくなったことがあります。
残念ながら、その寿司は、いわゆる「なんちゃって寿司」で、日本の寿司職人が握るものとは程遠いものでした。それでも現地のアメリカ人高齢者は美味しそうに食べていたものでした。
欧米諸国の高齢者にとって低カロリー・高タンパクで味の満足度も高い日本食は魅力的
しかし、時代は変わり、多くのアメリカ人が日本食を食べるようになりました。円安のおかげで来日旅行者が増え、日本の本場の味を知る人も増え、日本食に対する評価は急上昇しました。
こうした「本物の日本食」を知ったアメリカ人が増えたことにより、アメリカ国内での日本食の需要は高まっています。
このような人たちが、いずれ高齢者になってCCRCに入居するようになった時、レストランに本物の日本食メニューがあれば、さぞ居住者満足度は高くなることでしょう。
低カロリー・高タンパクで味の満足度も高い日本食は、高血圧や肥満などの生活習慣病が多い欧米諸国の高齢者にとって魅力的だからです。
これが、日本の食こそが、アメリカを含む海外市場で外貨を稼ぐ強力なビジネスモデルになり得ると強く実感している背景なのです。