「健康測定器」それって正確?

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9月20日 日経MJ連載 なるほどスマート・エイジング

超高齢社会では人々の健康志向が強まる。これを見越して前回取り上げた機能性表示食品と同様に「健康測定機器」も市場にどんどん増えている

最近スーパーやショッピングセンター(SC)などの商業施設でよく見かけるのは「元気力・免疫力チェッカー」「血管年齢計」などのコイン式の健康測定機器だ。

「元気度・血管健康度の測定結果をわかりやすく表示」「気になる部分の年齢チェック」などとうたい、1回200円という手ごろな価格設定で消費者の健康志向をくすぐっている。

だが、筆者はあいにくこれらの測定機器を利用している人を見たことがない。なぜだろうか。

理由の1つは、こうした機器に製造会社がはっきり表示されていない場合が多いことだ。健康測定機器のような利用者の健康データを扱うものは、誰が監修しているのか、どこのメーカーが製造しているのかなどの情報が製品に対する信頼感醸成の面でかなり重要だ。

病院やクリニックで健康データを測定される場合は、測定機器のメーカーになじみがなくても、国家資格を持つ医師や看護師が計測することで信用を担保している。

一方で、先の健康測定機器で健康データを計測する際には医師も看護師もおらず、メーカーも明らかでない。健康データは極めてプライバシー性の高い個人情報なので、上述の信用が担保されていなければ利用されにくい。

ばれる雑さ 危機感を

さらに筆者が問題視しているのは、「元気度」と称しているものの信ぴょう性だ。当該製品は元気度を自律神経のバランスと定義し、評価するために「心拍変動」を用いている。

心拍変動とは、心電計で計測した心電図上でR波と呼ばれる波どうしの間隔のゆらぎのことを言う。医学的にはミリ秒単位のゆらぎを周波数解析することで自律神経の活動を評価している。

一方、上述の健康測定機器では心電計ではなく、脈波計を利用している。これは「光電式容積脈波記録法(PPG)」と呼び、手の指の血管に赤外光をあてて血管中の血流変化(脈波)を計測し、心拍タイミングを検出する方法だ。

問題は、PPGで検出される心拍タイミングは、心電図上のR波のタイミングと一致しないことだ。安静で計測しても両者には20ミリ秒以上の誤差があり、かつその誤差が一定でないことが報告されている。

正確な周波数解析のためには、R波を5ミリ秒以内の精度で検出する必要がある。このため、当該製品の脈波計では心拍変動を正確には評価できないのだ。

こうした理論は医学界では常識だが、一般消費者は通常知り得ないだろう。にもかかわらず、製品として市場に登場し、あたかも正確に計測できるかのような訴求をしているものが増えていることに筆者は危惧を覚える。

これからの小売業は、こうした製品を店舗に置きっ放しにしないほうがよいだろう。なぜなら、これからは健康志向の高まりと同時に、スマート・シニアの製品に対する見方もどんどん厳しくなっていくからだ。

信ぴょう性のない製品を野放しにする小売業は、賢い消費者から敬遠されるだろう。小売業は製品に対する「目利き力」をさらに向上して、先進的な消費者に先を越されないようにしなければならない。

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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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