シニア向け新規事業の基本は「不の解消」

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高齢者住宅新聞 介護保険に頼らないシニアビジネス成功の12のヒント 第7回

「不」とは「不安」「不満」「不便」「不具合」など

一般にシニアにとって消費の優先順位の高いものは、「不」の解消のための消費だ。「不」とは「不安」「不満」「不便」であり、これらを解消させるものに有望市場の芽が潜んでいる。

例えば、私が03年3月に日本に初めて紹介した「カーブス(Curves)」というアメリカ発の女性専用フィットネスクラブ・チェーンは、ターゲットである中高年女性の不満を徹底的に解消することで成功した好例である。

また、近年のコンビニで目立つのは、シニア・女性客を対象にした「不便の解消」の工夫だ。高齢になると一人暮らしの割合が特に都市部で増える。一人なので一回に食べる量は少量で十分。都度自分で料理するのが面倒なので、惣菜や弁当など中食(なかしょく)へのニーズが高まる。

また、足腰に不具合がある人の割合が増えるので、遠くの大型スーパーより、近くの小型店の方が行きやすくなる。こうした背景から、かつては若者向けだったコンビニをシニアの生活支援拠点に変化させている。

機能重視・スタイル無視の福祉系商品は狙い目

NTTドコモの大ヒット商品「らくらくホン」は、初期のモデルではデザインが年寄り臭いのが不満と言われた。その後機能は充実させたまま、デザインをスタイリッシュに変えて大成功した。石坂浩二の宣伝で有名な「ハズキルーペ」が売れたのも、「老眼鏡はダサい」というイメージを覆したからだ。

一方、介護用品や福祉用具は、概して商品にファッション性が乏しく、改善の余地が多い。例えば、高齢者が杖代わりにも使う「シルバーカー」がそうだ。買い物の収納バッグ機能、休憩用の椅子の機能もあるカートだが、機能重視・スタイル無視の典型である。

高齢者向けの靴も同様だ。滑りにくい、脱着しやすい、足に負担が少ないなどの機能優先で、お洒落にはほど遠いものが大半だ。実はこれが顧客の購買意欲を萎えさせ機会損失になっている。

逆に言えば、こうした福祉系商品は新規事業の狙い目と言える。

成功するシニアビジネスの教科書
高齢者住宅新聞

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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