健康寿命を延ばすにはどうすればよいか?

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くらしの豆知識 2016 国民生活センター

独立行政法人国民生活センター編集・発行くらしの豆知識’2016「セカンドライフを楽しむ」に寄稿しました。本書は創刊以来44年、毎年発行し、年間約28万部が全国で読まれているとのことです。国民生活センターからの依頼により、二つの内容について寄稿しました。

健康寿命とは何か?

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「平均寿命」とは、生まれてから亡くなるまでの寿命の平均値です。日本人の平均寿命は、女性が86.41歳で世界第1位、男性が79.94歳で世界第5位と、世界でもトップクラスです(厚生労働省「12年簡易生命表」)。

これに対して、「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいいます。

国が進める「健康日本21(第2次)」(13年~)によると、日本人の健康寿命は、平均寿命より男性で9.13年、女性では12.68年も短くなっています(10年)。

健康寿命と平均寿命との差は、「日常生活に制限のある不健康な期間」、つまり「要介護や要支援状態の期間」です。この期間が男女とも約10年もあるのは、平均寿命がトップクラスの世界の国々のなかでも日本だけです。

要介護・要支援になる原因は何か?

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健康寿命を伸ばすことは、要介護・要支援の期間を短くすることです。理想は要介護・要支援にならないことです。そのためには、原因を知って予防策を講じることが重要です。

表1は要介護になった主な原因疾患です(厚生労働省 国民生活基礎調査13年)。介護が必要となった主な原因を要介護度別にみると、要介護者では「脳血管疾患(脳卒中)」が21.7%、「認知症」が21.4%と多くなっています。要支援者では「関節疾患」が20.7%で最も多く、次いで「高齢による衰弱」が15.4%となっています。

脳血管性疾患(脳卒中)には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3種類があります。原因の上位にある認知症の約3割は脳卒中が原因疾患なので、脳卒中は要介護になる原因の最上位です。

要支援者の原因のトップ、関節疾患は運動器障害と呼ばれます。運動器とは、体の運動にかかわる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。年をとるにつれてこうした運動器に不具合が出てきます。高齢による衰弱は、廃用性症候群または生活不活発病ともいいます。外出機会が少なく、運動不足によってさまざまな心身機能が低下することです。

以上で明らかなように、要介護・要支援になる原因疾患の多くは、脳と運動器にかかわるものです。ということは、これらを適切に維持できれば、要介護・要支援になるリスクをかなり下げられるということです。

健康寿命を延ばすにはどうすればよいか?

具体的な予防策として、①身体を動かす生活習慣、②脳を使う生活習慣、③バランスのとれた栄養が重要です。①は、毎日30分から1時間程度のウォーキングなどの有酸素運動を心がけること、高齢期に入ったら転倒防止のために下肢や体幹の筋力運動を毎日行うことです。②は、簡単な計算、手書き、音読を一日15分程度集中的に行うこと。脳の多くの部位を活性化させ、脳機能低下防止に有効です。

③は、一般に壮年から中年期においては過栄養が寿命を縮め、老齢期においては低栄養が心身機能を衰弱させることが知られています。米を中心に魚、肉、野菜、海藻、豆類など多様なおかずで構成される「一汁三菜」を基本に、女性は50歳頃から、男性も60歳になる前から、動物性たんぱく質を十分にとり、油脂類も不足しないように気をつけましょう。

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